バルザム型情報収集艦

バルザム型情報収集艦 (Balzam class AGI)

バルザム型情報収集艦は、ソビエト連邦およびロシア海軍が導入した情報収集艦で、そのNATOコードネームであるバルザムは、ソ連の計画名「1826型偵察艦」(プロジェクト1826、リラ)に由来しています。この艦は、主に軍事情報の収集を目的として設計された初の本格的な艦艇です。

構造

古くはソ連海軍の情報収集艦は、漁船や測量船に通信技術を追加した形状であったことから、外観は漁業用の船に類似していました。しかし、バルザム型はそのデザインを一新し、艦体は灰色に塗装されています。また、艦には二つのレドームや二本の通信用マストを採用し、自衛のための機関砲も搭載されています。これにより、先進的な軍事情報収集が可能となっています。さらに、艦の上構が大型であるため、他の艦への物資補給も行える設計となっています。

武装

自衛用装備としては、バルザム型がソ連の情報収集艦の中で初めて固定武装を備えた艦艇です。艦橋の前方には、AK-630M 30mmガトリング砲が搭載されており、これはソ連海軍で一般的に使用される艦対空武器です。ただし、特殊なレーダーは搭載されていないため、手動での追尾は光学的手法に依存しています。また、SA-N-5グレイルという艦対空ミサイルの4連装発射機を2基装備しています。このミサイルは東側諸国で廣く用いられている赤外線誘導型の防空システムで、射程は約5kmとなっています。

運用

バルザム型はソ連海軍にとって初めての本格的情報収集艦であり、大量に生産されたことから、その運用は多岐にわたります。主な任務は、アメリカ合衆国の原子力潜水艦基地やケープカナベラルの弾道ミサイル発射実験の監視に従事することです。また、NATOの軍事演習の偵察・監視活動においても重要な役割を果たしました。

日本海や北太平洋海域においては、日本の航空自衛隊のレーダー施設や海上自衛隊の護衛艦による対空レーダーの電子情報収集活動に多く従事しています。現在も太平洋艦隊や北方艦隊に所属しており、同型艦にはモマ型情報収集艦や後継のヴィシュニヤ型情報収集艦が含まれます。2022年の春、太平洋での任務の一環としてバルザム型は北海道を一周する航海を行い、その際には海上自衛隊の艦艇や哨戒機による警戒が行われました。

さらに、バルザム型情報収集艦は練習艦としての機能も持ち合わせており、電子戦の戦術訓練や水兵の航海技術教育も実施されています。

同型艦

全てのバルザム型艦は、カリーニングラードで建造されました。この艦は、ソ連及びロシア海軍の情報収集能力を大いに強化し、今なお重要な役割を果たし続けています。

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