バレンシアの熱い花

バレンシアの熱い花

『バレンシアの熱い花』は、宝塚歌劇団が1976年に初演したミュージカル作品です。作は柴田侑宏、音楽は寺田瀧雄が担当しました。19世紀初頭のスペイン、バレンシア地方を舞台に、父を暗殺された貴族の青年が復讐を遂げようとする姿を描いています。柴田侑宏が劇作家・演出家として充実期に手がけた作品であり、初演の成功後も、再演が繰り返され、宝塚歌劇団の代表的な作品の一つとして、多くのファンに愛されています。

あらすじ

19世紀のスペイン、バレンシア地方。領主ルカノールは、フランスの息がかかっており、横暴な支配を続けていました。前領主の息子であるフェルナンドは、2年間の軍務を終えて帰郷します。父がルカノールに暗殺されたことを知ったフェルナンドは復讐を決意し、退役軍人のレオン将軍の助言に従い、遊び人のふりを始めます。

酒場に入り浸るようになったフェルナンドは、そこで働く歌い手のラモンやイサベラと親しくなります。一方、ルカノールの甥であるロドリーゴも、恋人のシルヴィアを叔父に奪われ、憎悪を募らせていました。共通の敵を持つフェルナンドとロドリーゴは協力してルカノールを倒すことを誓い、ラモンも仲間に引き入れようとします。ラモンは一度は断りますが、妹のローラがルカノールの部下に殺害されたことで、復讐に加わることを決意します。彼らは「黒い天使」と名乗り、夜な夜な悪党を討ちます。

フェルナンドはイサベラと恋に落ちますが、婚約者のマルガリータを裏切ることができません。また、イサベラも、フェルナンドとの関係が復讐が終わるまでの儚いものだと悟っていました。一方、ロドリーゴはシルヴィアと密かに愛を確かめ合っていました。

そして、レオン将軍率いる義勇軍が決起し、ついにルカノールとの決戦の日が訪れます。

登場人物

フェルナンド・デルバレス侯爵: 前領主の息子。父の復讐を誓い、遊び人を装う。
ロドリーゴ・グラナドス伯爵: フェルナンドの友人。ルカノールの甥で、恋人を奪われた。
ラモン・カルドス: 酒場の歌い手。イサベラに恋心を抱いている。
イサベラ: 酒場の女性。フェルナンドとの身分の違いを自覚している。
シルヴィア: 反逆罪で捕えられた父を救うため、ルカノールの妻となる。
マルガリータ: フェルナンドの婚約者。レオン将軍の孫娘。
ルカノール公爵: 現領主。横暴な支配者。
レオン将軍: 人望の厚い退役軍人。
セレスティーナ侯爵夫人: フェルナンドの母。

主な楽曲

バレンシアの熱い花
瞳の中の宝石
決意
恋のカンタンテ
死んでもいい
バレンシアのために
ロンサールの恋歌

(作詞：柴田侑宏 作曲 ：寺田瀧雄)

暗殺依頼状
黒い天使３人登場
再会
士官たちの乱暴
出撃
フェルナンドの告白
マルガリータのテーマ
密談
夜会
ルカノール登場
ロドリーゴ家の舞踏会
ロドリーゴの苦悩
別れ

(作曲：寺田瀧雄)

決闘
城中侵入
ラモンの怒り

(作曲：河崎恒夫)

「瞳の中の宝石」は、イベントなどで歌われることも多い楽曲です。「バレンシア」は、ホセ・パディーリャが作曲した楽曲で、宝塚歌劇団では高木史朗の訳詞で歌われていますが、著作権の関係上、録音・録画は禁止されています。

これまでの上演

『バレンシアの熱い花』は、初演の1976年月組公演以降、たびたび再演されています。

1976年：月組（初演）
1979年：月組（東京公演のみ）
2007年：宙組
2016年：宙組（全国ツアー）
2023年：星組（全国ツアー）

特に2007年の宙組公演では、演出が一部変更され、ベテラン脇役の退団に合わせて、密偵ホルヘの役の比重が大きくされたり、クライマックスシーンが変更されたりしました。また、ロドリーゴ役とラモン役を、蘭寿とむと北翔海莉が役替わりで務めたことも話題となりました。

スタッフ

1976年と2007年の主なスタッフは以下の通りです。

1976年
作・演出：柴田侑宏
音楽：寺田瀧雄、河崎恒夫
音楽指揮：野村陽児
振付：喜多弘、河上五郎、岡正躬

2007年
作・演出：柴田侑宏
演出：中村暁
音楽：吉田優子、寺田瀧雄、河崎恒夫
音楽指揮：伊澤一郎
振付：ANJU、蘭このみ

漫画化

宝塚ファンの漫画家、さいとうちほによって漫画化されており、宝塚GRAPH誌に掲載後、単行本にも収録されています。

その他

実況レコードやCDも発売されており、特に「瞳の中の宝石」は、多くのファンに愛される楽曲です。

この作品は、スペインを舞台にした情熱的な物語と、魅力的な音楽、そして宝塚歌劇ならではの華やかさが融合した、見ごたえのある作品です。宝塚歌劇を代表する作品の一つとして、今後も多くの人に愛され続けることでしょう。

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