バンドブレーキ

自転車用バンドブレーキ：構造、歴史、そして現状

自転車の後輪に使われるバンドブレーキは、1928年に日本の唐沢製作所が開発したブレーキシステムです。ドラムブレーキの一種で、車輪のハブに固定された円筒形のドラムの外周を、摩擦材を貼り付けた鋼鉄製の帯（バンド）が締め付けることで制動力を発生させます。ドラムには工具を差し込む穴があり、車輪への取り付け、取り外しを容易にしています。

構造と仕組み

バンドブレーキは、ブレーキバンド、それを締め付ける機構、そしてそれらを覆うカバーから構成されます。ブレーキレバーを操作すると、インナーワイヤーがブレーキバンドをドラムに巻き付けるように締め付け、制動力を発生させます。このブレーキは自己増力作用（セルフサーボ）を持つため、前進方向への制動力は非常に強力です。しかし、後退方向への制動力は弱くなります。

ブレーキ本体とレバー間の接続には、一般的に安価なケーブル（ブレーキワイヤー）が使用されます。かつてはロッド式も存在しましたが、取り回しの悪さから廃れています。バンドブレーキは、キャリパーブレーキと比較して制動力が非常に高く、子供の握力でも簡単にタイヤをロックできるほど強力です。

歴史と普及

バンドブレーキは、当初は英国式ロードスターをベースとした実用車に、重量物積載やリヤカー牽引といった重負荷に対応できるブレーキとして採用されました。その後、日本の実用車である軽快車やシティサイクルにも広く普及し、長年にわたって後輪ブレーキの標準的な形式でした。しかし、日本国外ではあまり普及しておらず、後輪ブレーキが義務付けられていないヨーロッパなどでは、ほとんど見かけることはありません。

欠点と騒音問題

バンドブレーキは、経年劣化によりブレーキング時に「キーキー」という音が発生することがあります。これは、ブレーキバンドに金属粉が付着し、摩擦係数が上昇することでバンドが振動するためです。この騒音は、バンドブレーキ特有の構造に起因するもので、メンテナンスでは解決できません。この騒音は、他のブレーキ方式にはない欠点であり、多くのユーザーにとって不快な音として認識されています。

安全性と石綿問題

過去には、バンドブレーキの摩擦材に石綿（アスベスト）が含まれていた時期がありました。石綿の毒性が明らかになった後、国内ではセラミック製の摩擦材に切り替えられました。しかし、2005年には中国工場で生産された石綿含有のバンドブレーキが国内で発見され、社会問題となりました。多くの製品が子供用自転車に使われていたことから、回収などの対応が行われました。現在でも、古い製品には石綿が含まれている可能性があるため注意が必要です。

現在と将来

バンドブレーキは、サーボブレーキやローラーブレーキといった他のブレーキ方式の登場により、現在ではシティサイクルや子供用自転車の一部、特に低価格帯の製品にのみ使用されるようになっています。その強力な制動力は利点ではありますが、騒音問題や石綿問題といった歴史的背景も踏まえると、その使用は限定的となっています。自転車店によっては、バンドブレーキの騒音や安全性への懸念から、他のブレーキへの交換を推奨するところもあります。

禁止事項と注意事項

ブレーキドラムへの注油は絶対に避けてください。注油すると制動力が著しく低下し、摩擦材が剥がれる可能性があります。これは、バンドブレーキの取扱説明書にも明記されている重要な注意事項です。

その他の用途

バンドブレーキは、自転車以外にも車椅子などにも使用されています。また、歴史的には信越本線横川～軽井沢間のラック式鉄道の歯車車用非常ブレーキとしても使用されていたという、興味深い歴史も持っています。

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