バーバラ・ルーシュ

バーバラ・ルーシュは、アメリカ出身の日本文学研究者であり、コロンビア大学の名誉教授、そして中世日本研究所の名誉所長を務めました。

生涯と業績

ペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれたルーシュは、アーラム大学を卒業後、ペンシルベニア大学で修士号を取得。その後、コロンビア大学大学院School of the Artsに進み、京都大学にも留学しました。1965年には、コロンビア大学で日本の中世文学をテーマにPh.D.を取得しています。

日本文学、特に中世の奈良絵本や御伽草子、絵解きの伝統に興味を持つようになったきっかけは、京都留学中に偶然出会ったイギリス人から、アイルランドのダブリンの図書館に奈良絵本があるという話を聞いたことでした。実際にダブリンを訪れて実物を見たことで、その魅力に引き込まれ、研究を始めることになります。

ハーバード大学やペンシルベニア大学で日本語と日本文学を教鞭を執り、ペンシルベニア大学では「中世日本研究所」を設立し、海外に流出した日本文学の資料を整理・研究しました。1982年には、全米東洋学年会に合わせて「アジアの絵解きの伝統ーその宗俗の関係・記号学・興行形式について」というシカゴ・シンポジウムを開催するなど、研究活動は多岐に渡ります。

コロンビア大学では、客員教授としてドナルド・キーン教授と共に近現代日本文学のクラスを担当し、1984年からは教授に就任。「中世日本研究所」もコロンビア大学で継続し、1986年にはコロンビア大学のEALACでドナルド・キーン日本文化センターを創設、初代所長となりました。奈良絵本研究国際会議を開き、第2回の会議開催時には海外所蔵奈良絵本展も開催しました。

研究の中で、無外如大禅尼が祀られていた大聖寺を訪れた際、尼門跡である花山院慈薫尼と出会います。慈薫尼の厚意により、大聖寺の菩提寺である大歓喜寺の庫裏を借りることができ、2003年には「中世日本研究所（京都）」を大歓喜寺に発足させました。

受賞歴

1991年：第1回南方熊楠賞（人文の部）
1999年：勲三等宝冠章
1999年：山片蟠桃賞 - 長年にわたる日本文学・日本文化史研究の功績と、『もう一つの中世像』を中心とする一連の著作（物語絵本や尼僧（門跡尼寺）の研究）
2008年：仏教伝道文化賞 - 門跡尼寺文化の発掘、調査、研究、普及への貢献
2011年：京都府文化賞功労賞

著作

『もう一つの中世像 比丘尼・御伽草子・来世』思文閣出版、1991年
『海外所蔵奈良絵本』バーバラ・ルーシュ他（編）、講談社、1979年
花山院慈薫『あやめ艸日記―御寺御所大聖寺門跡花山院慈薫尼公』桂美千代共編、淡交社、2009年

バーバラ・ルーシュの研究は、日本の中世文学、特にこれまで光が当たりにくかった奈良絵本や御伽草子といった分野に新たな光を当て、その魅力を世界に広める上で大きな役割を果たしました。また、門跡尼寺文化の研究など、多様な視点から日本文化を見つめる姿勢は、多くの研究者に影響を与えています。

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