バーラム (戦艦)

イギリス海軍戦艦「バーラム」：波乱の生涯

「バーラム」（HMS Barham）は、イギリス海軍が誇るクイーン・エリザベス級戦艦の3番艦として、スコットランドのジョン・ブラウン造船所でその生涯をスタートさせました。第一次世界大戦では第五戦艦戦隊の旗艦としてユトランド沖海戦に参加、第二次世界大戦では地中海戦線を中心に活躍しましたが、1941年、ドイツ潜水艦の雷撃により沈没しました。その艦名は、トラファルガー海戦時の海相であり、英国海軍の強化に尽力した初代バーラム男爵チャールズ・ミドルトンに由来します。

第一次世界大戦での活躍

1915年の就役直後には姉妹艦との衝突事故に見舞われましたが、修理後、第5戦艦戦隊の旗艦としてユトランド沖海戦に参加。高速戦艦として巡洋戦艦隊の隷下で行動し、ドイツ帝国海軍の巡洋戦艦と交戦し損傷しました。修理後、1919年まで本国艦隊に所属しました。

近代化改装

就役後、装甲強化や対空火器の増強など、数々の改装が行われました。特に、1930年代の近代化改装では、主甲板の防御力強化、水雷防御のためのバルジ追加、艦橋構造の大型化、煙突の形状変更、後部マストの三脚化など、外観が大きく変化しました。さらに、水上機運用のため、カタパルトやクレーンが追加されました。1940年にはロケット砲が装備されたものの、後に機銃に換装されるなど、時代に応じた装備の変遷が見られました。

第二次世界大戦での激戦

第二次世界大戦では、大西洋と地中海での戦いに参加しました。1939年には駆逐艦との衝突事故で相手を沈没させ、同年にはドイツ潜水艦の雷撃を受け損傷しました。1940年にはダカール沖海戦に参加し、フランス海軍の新鋭戦艦と交戦、さらにマルタ島への輸送船団の護衛にも従事しました。1941年には、リビアのバルディアに対する艦砲射撃、マタパン岬沖海戦での勝利に貢献するなど、数々の戦果を挙げました。

しかし、1941年5月にはクレタ島沖で空襲を受け損傷、同年11月25日には、地中海艦隊旗艦として行動中、ドイツ潜水艦「U331」の雷撃を受け、左舷に横転、その後、弾薬庫の爆発により沈没。乗員約1,184名のうち、艦長を含む861名が犠牲となりました。この沈没の様子は映像にも記録されており、その悲劇的な瞬間を今に伝えています。

戦没の影響

「バーラム」の喪失は、そのわずか2週間前に空母「アーク・ロイヤル」を失っていたイギリス海軍にとって、大きな痛手となりました。戦時下であったため、公式発表は3ヶ月後となりましたが、その喪失は多大な影響を与えました。また、ドイツ側がUボートによる撃沈を盛んに宣伝したことも、歴史に残る出来事です。

創作作品や逸話

映画「コロネル沖海戦とフォークランド沖海戦」では、クイーン・エリザベス級戦艦が巡洋戦艦を演じる形で登場。「バーラム」は巡洋戦艦「インヴィンシブル」として撮影されました。

また、交霊会で戦艦の沈没が予言されたという逸話も存在し、「バーラム」の沈没と関連付けられています。この逸話は戦時下で、政府の発表前に情報が漏れていた可能性を示唆しています。

まとめ

「バーラム」は、2つの世界大戦を戦い抜いたイギリス海軍の象徴的な戦艦でした。幾多の改装を経て近代化を果たし、数々の激戦を経験しましたが、最後は潜水艦の攻撃によりその生涯を閉じました。その勇ましい姿と悲劇的な最期は、歴史に深く刻まれています。

参考文献

「世界の艦船増刊第30集 イギリス戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第67集 第2次大戦時のイギリス戦艦」（海人社）
レオンス・ペイヤール「(7) 地中海の潜水艦 一九四〇年～一九四二年」『潜水艦戦争 1939-1945』長塚隆二 訳、早川書房、1973年12月。
Ｍ・ミドルブック、P・マーニー『戦艦 ― マレー沖海戦 ―』内藤一郎 訳 、早川書房、1979年6月。
* 「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）

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