パイパー PA-48

PA-48 エンフォーサー：P-51マスタングの後継機

PA-48 エンフォーサーは、アメリカ合衆国のパイパー・エアクラフト社が開発したターボプロップエンジン搭載の攻撃機です。第二次世界大戦で活躍したノースアメリカン P-51 マスタングを起源とする機体ですが、その設計思想と性能は、P-51マスタングをはるかに凌駕しています。愛称である「エンフォーサー」は「法執行者」を意味し、その任務を端的に表しています。

開発の経緯

エンフォーサーの開発は、1968年にキャバリエ・エアクラフト社のデヴィッド・リンジィ氏によって開始されました。当初は、COIN機（対ゲリラ戦用軽攻撃機）としての運用を目指し、ロールス・ロイス ダート 510 ターボプロップエンジンを搭載したキャバリエ マスタングの改造から始まりました。しかし、この試作機は軍からの採用には至りませんでした。

その後、量産体制を持つ企業への売却を模索する中で、改良型の「ターボ マスタング III」は、1970年代初頭にパイパー社に売却され、「エンフォーサー」と改名されました。パイパー社は、アメリカ空軍からライカミング T55-L-9 エンジンを借り受け、200時間以上の飛行試験を実施しました。1984年には、アメリカ合衆国議会からの予算配分を受け、2機の試作機（PA-48）が新たに製造され、アメリカ空軍による評価試験が行われました。しかし、この試験でも軍への採用には至りませんでした。

開発過程において、パイパー社は既存のマスタングを改造した2機の試作機を製作しました。一機は単座型（PE-1）、もう一機は複座型（PE-2）です。しかし、PE-2は1971年に墜落事故により失われています。1971年から1972年にかけて行われたPave COIN計画の評価試験では、良好な性能を示しましたが、契約獲得には至らず、開発は難航しました。

飛行テストと再評価

パイパー社とリンジィ氏は、8年間にわたる努力の末、アメリカ空軍によるエンフォーサーの再評価を議会に働きかけました。その結果、1979年の国防予算から、2機の新型試作機を製造し、アメリカ空軍による再評価試験を実施するための費用が支給されました。

新たに製造された2機のPA-48は、1983年から1984年にかけてエグリン空軍基地とエドワーズ空軍基地でテストが行われました。試験では良好な性能を示しましたが、アメリカ空軍は再びPA-48の採用を見送りました。完成したPA-48は、P-51マスタングとの共通部品が10％以下とされ、事実上、全く新しい機体へと進化していました。

現状

製造された4機の試作機のうち、2機が現存しています。1機はエドワーズ空軍基地で修復を待っている状態であり、もう1機は修復を終え、オハイオ州の国立アメリカ空軍博物館に展示されています。

PA-48 エンフォーサーの要目

まとめ

PA-48 エンフォーサーは、技術的に優れた機体でありながら、様々な事情により軍への採用には至りませんでした。しかし、その開発の歴史と性能は、航空史において重要な位置を占めています。現在、現存する機体は、航空史研究の貴重な資料として活用されています。

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