パキスタンの鉄道

パキスタンの鉄道は、そのルーツをイギリス植民地時代のインド帝国に持ちます。インド、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカがイギリスの支配下にあった当時、鉄道網は植民地経営の一環として建設されました。その後、民族や宗教の違いからインドとパキスタンが分離独立し、現在のパキスタンの鉄道網が形成されるに至りました。

現在、パキスタンには約8,000kmの国鉄線が存在します。その多くは軌間1676mmの広軌路線ですが、一部には1000mmの狭軌路線も残っています。また、交流電化 (25000V) が施されている区間も存在しますが、大部分は非電化のままでディーゼル機関車が使用されています。

速達列車の最高速度は120km/hとされていますが、保線状況が良くないため、乗車時にはかなりの揺れを覚悟する必要があります。例えば、ラホールとカラーチーを結ぶ1200kmの急行列車の表定速度は85km/hで、所要時間は約14時間です。近年、鉄道はバスや航空機との競争に苦戦しており、乗客数も減少傾向にあります。また、イスラム教の文化が色濃く反映されているため、車内では男女の座席が明確に区別されています。

パキスタンの鉄道は国際路線も有しており、イランとインドへ列車が運行されています。イランへは、パキスタン中南部のクエッタからザーヘダーンまで、1日に1〜2本程度の国際列車が運行されています。

一方、インドへの列車は、カシミール問題など両国間の政治的な緊張により運行が中断されることが多くあります。かつて唯一開通していたアムリトサルとラホールを結ぶ列車も、2001年から2004年にかけて運休していました。現在は「サムジョーター・エクスプレス」として運行が再開されていますが、国境審査に時間がかかるため、全線46kmの移動に12時間以上を要するなど、利便性は高くありません。しかし、貨物輸送においては一定の需要があり、また、両国の平和維持の象徴としての役割も担っています。その象徴的な例として、2006年2月には、1965年の第二次印パ戦争で破壊され廃線となっていたムナーバーオとコークラーパールを結ぶ、タール砂漠南部を横断する鉄道が再開されました。

パキスタンの鉄道事業者は「パキスタン鉄道」です。

隣接国との鉄道接続状況は以下の通りです。

イラン：接続あり
アフガニスタン：接続なし
中華人民共和国：接続なし
インド：接続あり

関連情報として、インドの鉄道や、パキスタン鉄道の前身であるイギリス領インド帝国のノース・ウェスタン鉄道も参照してください。

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