パキスタン国際航空8303便墜落事故

パキスタン国際航空8303便墜落事故の概要

2020年5月22日、パキスタン国際航空8303便が、同国ラホールの空港からカラチの空港へ向かう途中で、着陸直前に住宅地に墜落しました。この事故により、乗員乗客97名と地上の住民1名、合計98名が犠牲となりました。事故機はエアバスA320-214型機で、2004年に製造され、中国東方航空での運用を経て、2014年よりパキスタン国際航空にリースされていました。

事故の詳細

事故機は、アッラーマ・イクバール国際空港を離陸後、カラチのジンナー国際空港へ向かっていました。しかし、着陸進入中に高度が高すぎることに気付いたパイロットは、自動操縦を解除して手動で降下を試みました。この際、機体は急降下し、着陸装置を格納したまま滑走路に胴体着陸しました。着陸時の衝撃でエンジンが損傷し、着陸復行を試みましたが、最終的に空港手前の住宅地に墜落しました。

事故原因

事故調査の結果、複数の要因が重なって事故が発生したことが判明しました。パイロットは、コロナウイルスの話題に気を取られ、標準的なコールアウトを怠っていました。また、高度や速度に関する管制官の警告を無視し、着陸装置を格納したまま着陸を試みるなど、操縦ミスを重ねていました。さらに、着陸時にエンジンが滑走路に接触したことで破損し、その後の飛行中にエンジンが停止したことが、墜落につながったと見られています。調査報告書では、パイロットの「自信過剰」や、管制官の連携不足も指摘されています。

乗員乗客

乗客は男性51名、女性31名、子供9名でした。生存者は2名で、そのうち1名は銀行の頭取でした。犠牲者の中には、軍関係者やモデルのザラ・アビドも含まれていました。

事故調査

事故調査には、エアバス、フランス航空事故調査局（BEA）、アメリカ国家運輸安全委員会 (NTSB) などが協力しました。フライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）が回収され、分析されました。調査の結果、パイロットの操縦ミスや管制官との連携不足に加え、着陸装置の不具合が事故に関与していた可能性も指摘されています。

事故後の影響

この事故は、パキスタンの航空業界における構造的な問題を浮き彫りにしました。事故後、パキスタン国内のパイロットの約40％が、替え玉受験などで免許を不正取得していたことが発覚しました。この不正行為により、多くのパイロットが飛行停止処分となり、パキスタン国際航空は欧州連合とアメリカ合衆国から乗り入れを禁止されるという事態に陥りました。この事故は、パキスタン航空業界の安全性に対する深刻な懸念を引き起こし、航空業界全体の見直しを迫られることとなりました。

その他

この事故は、ラマダンの終了を祝う祝日「イド・アル＝フィトル」の直後に発生したため、多くの人が親族の家へ帰省する途中で犠牲になりました。また、当時パキスタンは新型コロナウイルスの感染拡大に苦しんでおり、医療体制が逼迫している状況でした。これらの要因も重なり、事故の悲劇をより深刻なものにしました。



この事故は、航空安全における人的要因の重要性を示すとともに、航空業界の構造的な問題に対する警鐘となりました。

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