パシフィックライナー

パシフィックライナー：大分と宮崎を結んだ高速バス路線の軌跡

2015年4月1日から2021年4月1日まで、大分県大分市・別府市と宮崎県宮崎市を結んでいた高速バス路線「パシフィックライナー」。東九州自動車道の開通によって実現したこの路線は、わずか6年の歴史に幕を閉じました。本記事では、その運行概要から廃止に至るまでの経緯、そして車両情報まで、パシフィックライナーの全貌に迫ります。

東九州自動車道開通がもたらした新たな路線

大分と宮崎間を結ぶ高速バスは、過去にも運行されたことがありました。しかし、高速道路網の未整備により運行時間が長く、1977年には廃止されています。その後、2010年には「わかあゆ号」も運行休止となり、大分と宮崎間の直通高速バスは存在しませんでした。

状況が一変したのは、2015年3月21日。東九州自動車道の佐伯IC～蒲江IC間が開通したことにより、大分と宮崎間が高速道路で結ばれることとなり、大幅な時間短縮が実現しました。このアクセス改善を背景に、パシフィックライナーは誕生しました。

運賃体系と利用可能パス

パシフィックライナーでは、曜日や繁忙期に応じて異なる3種類の運賃体系を導入していました。金・土・日・祝日と繁忙期の通常運賃、平日（月～木）の割引運賃、そしてハイウェイバスドットコムを利用したWeb割の3種類です。運行区間が大分県と宮崎県にまたがるため、SUNQパスは全九州版（3日間券・4日間券）のみ利用可能でした。

競争激化と利用率低迷

東九州自動車道の大分～宮崎間開通により、パシフィックライナー以外にも多くの高速バス路線が新規運行または経路変更を行いました。「ひむか号」「宮崎-福岡線夜行」「ひなたライナー」「トロピカル号」など、新たな競争相手が出現したのです。しかし、パシフィックライナーの利用率は低迷し、赤字が拡大。様々な対策を講じ、利便性向上に努めましたが、抜本的な改善には至りませんでした。

新型コロナウイルス感染拡大と路線廃止

追い打ちをかけるように、2020年には新型コロナウイルス感染症の世界的流行が発生。同年9月1日には全便運休となり、その後運行再開されることはありませんでした。利用客の減少が深刻化し、路線維持が困難と判断された結果、2021年3月31日をもってパシフィックライナーは廃止されました。他の東九州自動車道経由の高速バス路線も、相次いで休止や廃止を余儀なくされました。現在では、宮崎交通の期間限定運行路線である宮崎～高千穂間高速バスのみが残るのみとなっています。

運行会社と経路

パシフィックライナーは、大分交通、大分バス、亀の井バス、宮崎交通、JR九州バスの5社が共同運行していました。

主な停車停留所は、別府駅前、大分駅前、延岡IC、門川BS、日向IC、西都IC、国富BS、宮崎BS、宮崎駅西、宮交シティなどです。一部便はパークプレイス大分を経由する経路も設定されていました。フェリーさんふらわあの西大分港発着便にも対応したダイヤ設定も特徴的でした。

車両と車内設備

パシフィックライナーに使用されていた車両はハイデッカーバスで、座席は3列シート（独立3列）と4列シートが混在していました。宮崎交通の車両には、パウダールーム付きトイレや各座席の充電コンセントなどが設置されていました。路線廃止後、これらの車両は他路線への転用または廃車となりました。

6年間の歴史に幕

パシフィックライナーは、東九州自動車道の開通という好機を生かして誕生したものの、競争の激化やコロナ禍の影響により、わずか6年でその歴史に幕を閉じました。その短いながらも存在感のある路線は、地域交通史に一つの記録として刻まれました。今後の地域交通のあり方について、改めて考えるきっかけとなったと言えるでしょう。

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