パシュトゥーンワーリー

パシュトゥーンワーリー：パシュトゥーン人の部族掟

パシュトゥーンワーリー（パシュトー語: پښتونوالی‎、英: Pashtunwali）は、アフガニスタンのパシュトゥーン人の間で広く受け入れられている部族の法律や掟の体系です。日本での表記は「パシュトゥーン掟」ともされます。これらの掟は、パシュトゥーン人の文化や価値観を反映したものであり、彼らの社会における行動規範となっています。

パシュトゥーンワーリーの特徴

パシュトゥーンワーリーは、主にシャリーア（イスラム法）とは異なるルールに基づいており、パシュトゥーン人のアイデンティティや社会構造に深く根ざしています。過去のターリバーン政権の下では、時折、シャリーアと混同され、他の民族集団にも強制される形で遵守されていました。このような状況は多くの民族間の不満を引き起こしました。

主な掟の内容

1. おもてなし

訪問者に対しては、見返りを求めず、心のこもったもてなしを行うことが求められます。この掟は、パシュトゥーン人が他者を大切にし、根深い敬意を持つ文化を示しています。

2. 聖域の提供

「敵から追われている者を自らの命を懸けて助けよ」という掟は、2千年以上も続いています。どのような状況であっても、命を賭して敵から逃げる者を保護し、その者が安全に戻るまで避難所としての役割を果たすことが求められています。例えば、ターリバーン政権は、アメリカ政府からのウサーマ・ビン・ラーディンの引渡し要求を拒否し、彼を守る姿勢を貫きました。この時、ムハンマド・オマルは「私の名誉は客人を裏切ることではない」と語りました。加えて、アメリカのネイビー・シールズの歴史において有名なレッド・ウィング作戦では、異教徒であるにもかかわらず、パシュトゥーン人によって匿われ、最終的に救出された例もあります。

3. 正義と復讐

正義を求め、悪に対して復讐することが強く求められています。これは、社会的な均衡を保つための重要な側面であり、部族社会の中での信頼関係の構築にも寄与します。

4. 勇気（トゥラ）

自らの家や土地、財産を守るために戦うことが期待されており、これは個々の勇気と誇りが試される瞬間です。

5. 信義

家族や友人、部族の仲間に対して誠実でいることが大事であり、信頼関係を築く基本となります。

6. 仲裁（ジルガ）

部族間の争いを解決するため、宗教指導者や名士が参加する仲裁会が行われます。ロヤ・ジルガはアフガニスタンで有名で、パキスタンでは非公式な裁判所の役割も果たしています。

7. 信仰

アッラーに対する信仰は、パシュトゥーン人の生活の中で重要な要素として位置づけられています。

8. 尊厳

パシュトゥーン人は自己の誇りを非常に重視し、他人に対しても同様に尊重をもって接することが求められます。

9. 女性の名誉（ナムス）

女性に対する名誉を守ることは、家庭や部族全体にとって非常に重要であり、あらゆる犠牲を払ってでもその貞操を守ることが求められます。

参考文献

• - マーカス・ラトレル、パトリック・ロビンソン『アフガン、たった一人の生還』 高月園子訳、亜紀書房、2009年

このように、パシュトゥーンワーリーはパシュトゥーン人の文化の核心を形成しており、彼らのアイデンティティや行動を形作る重要な要素であることがわかります。

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