パソピア

東芝製パソコン「パソピア」シリーズの歴史

東芝がかつて展開していたパソコンブランド「パソピア(PASOPIA)」は、「パーソナル」と「ユートピア」を組み合わせた造語です。独自仕様機から始まり、MSX規格機にも進出するなど、多様な機種を展開していました。本稿では、パソピアシリーズの歴史を8ビット機、16ビット機、MSX機に分類し、それぞれの機種の特徴や市場における立ち位置を詳細に解説します。

8ビット機

パソピア (PA7010/PA7012): 1981年発売の初代機。Z80A CPU、64KB RAM、32KB BASIC ROM、16KB VRAMを搭載。160×100ドットのノーマルグラフィックと、640×200ドットのファイングラフィックの2モードを備えていました。サウンドは単音ビープでしたが、BASICから音階と音長を指定できました。当時のNEC PC-8001を上回るスペックでしたが、後発だったためインパクトに欠けました。VRAM操作の特殊性や仕様書の非公開も、リアルタイムゲームの開発を阻害しました。しかし、後年の活用本でハードウェア仕様が明らかになり、ファイングラフィックモードを活用した技法も公開されるなど、現在も熱心なファンに支えられています。米国では「T100」として販売されました。

本体にはPACと呼ばれるカートリッジスロットがあり、RAMパック、漢字ROMパック、ジョイスティックポートなどが拡張できました。搭載言語はMicrosoft BASICベースのT-BASICと、東芝のオフコンBP-100のBASICを移植したOA-BASICがあり、カートリッジで切り替え可能でした。ディスクベースでは、T-BASICとOA-BASICのDisk BASICに加え、UCSD Pascal、CP/M|CP_Mも利用できました。

パソピアmini (IHC-8000): 1982年発売のハンドヘルド機。24桁×1行の液晶画面を備え、拡張ユニットと接続することで外部モニタ出力も可能でした。パソピアシリーズとの互換性はありませんでしたが、RS-232Cで接続してパソピアを親機として利用できました。

パソピア7 (PA7007): 1983年発売。初代パソピアの後継機で、ホビー用途における弱点を強化しました。VRAMを48KBに増量し、27色中8色の同時発色を実現。ファイングラフィックモードでのドット単位の色指定も可能になりました。サウンド機能も強化され、SN76489を2つ搭載することで6重和音を実現しました。キーボードパネルは赤、青、茶の3色が付属し、交換可能でした。初代パソピアとの部分的な互換性も維持されていました。

パソピア5 (PA7005): 1984年発売の初代パソピアの廉価版です。

パソピア700: 東芝と旺文社が開発した家庭学習システム用パソコンで、パソピア7をベースとしていました。2台のFDDを内蔵し、セパレートキーボードを採用していました。

16ビット機

パソピア16 (PA7020): 1983年2月発売。オフィス用途を主眼に置いた16ビット機で、8ビット機との互換性はありませんでした。8088-2 CPU、最大512KBメモリ、640×500ドットモノクログラフィックを備え、オプションで8色、16色表示に拡張できました。MS-DOS 2.0を標準装備し、拡張スロットを4つ備えていました。米国では「T300」として販売されました。

パソピア1600 (PA7030): パソピア16の後継機。CPUは8086-2に、グラフィックは8色表示に強化されました。筐体が小型化され、拡張スロットは2つに減りました。マウスとJS-WORDが標準装備されました。

パソピア1600 TS100/300: 80286 CPU、704KB RAMを搭載。MS-DOS 2.11を標準装備し、FDDとHDDの組み合わせが複数用意されました。

MSX仕様機 (パソピアIQシリーズ)

パソピアIQシリーズはMSX規格に準拠した機種で、それまでのパソピアシリーズとは互換性がありませんでした。国内では標準装備が少ないシリアルポートを多くの機種で標準搭載し、RGB21ピン接続端子も備えていました。機種によってRAM容量、VRAM容量、搭載機能が異なっていました。多くの機種では、岡田有希子がイメージキャラクターを務めていました。HX-34は1986年度グッドデザイン賞を受賞しています。

その他

T-400: パソピアの前身ともいえる参考出品機。Apple IIに似たデザインで、Intel 8085相当品のCPUを搭載していました。海外市場向けに開発されましたが、商品化には至りませんでした。

参考文献

佐々木潤 (2013), 80年代マイコン大百科, 総合科学出版
ASCII 1982年12月号、1983年2月号、1983年7月号

CMキャラクター

横山やすし・木村一八親子、大内和美、岡田有希子