パッシングゴール

パッシングゴール：奇跡の逃げと惜敗の物語

1966年生まれの競走馬、パッシングゴール。長距離に強いヴィミーとヤマニンウエーを両親に持ち、その血統から期待されたものの、若駒時代は重賞とは無縁の生活を送りました。3歳、4歳時にはそれぞれ6戦1勝、17戦1勝と、華々しい活躍とは程遠い成績でした。5歳、6歳になっても、条件戦での勝利を重ねるものの、重賞レースでの突破口は見出せませんでしたが、7歳を迎えた1972年、パッシングゴールは人生を大きく変える飛躍を遂げます。

重賞初制覇と連勝劇

新潟記念で、54戦目にしてついに重賞初勝利を掴みました。格上挑戦での勝利は、関係者のみならず競馬ファンの度肝を抜く快挙となりました。続く新潟日報賞では、桜花賞優勝馬ナスノカオリに僅差で敗れ3着。しかし、勢いは衰えず、続く関屋記念でも勝利を収め、重賞2勝目を達成します。このレースでは、10番人気のサンヨウコウが2着に入る大波乱となり、連勝複式は187倍という高配当となりました。

天皇賞・秋の大逃げ劇

夏の活躍を受け、秋シーズンでは天皇賞（秋）への挑戦を決めました。出走メンバーには八大競走優勝馬はいませんでしたが、パッシングゴールは8番人気と低評価。しかし、レース展開は誰もが予想だにしなかった展開になります。スタート直後のアクシデントで、隣枠の馬が落馬。その混乱に乗じて、パッシングゴールは一気に先頭に躍り出ます。

そして、新田幸春騎手は事前に決めていた大逃げ戦法を選択。後続に20馬身以上の差をつけ、1週目のゴール板を通過。最大で30～40馬身もの大差をつけ、観客を驚愕させました。

しかし、最後の直線で、後方から追い上げてきたヤマニンウエーブに交わされ2着。勝ったヤマニンウエーブは7番人気、パッシングゴールは8番人気と、共に人気薄だったことで、連勝複式は10,210円という、天皇賞史上初の万馬券となりました。パッシングゴールの大逃げ劇は、競馬史に刻まれた名場面として語り継がれることになります。

引退後

天皇賞での好走により、パッシングゴールは有馬記念への出走を果たします。しかし、このレースでは年度代表馬イシノヒカルの前に敗れ、10着と惨敗。翌1973年も現役を続けますが、3戦未勝利に終わり、ついに競走馬としての生涯を終えます。

パッシングゴールの短いながらも華々しい競走生活は、多くの競馬ファンに感動と興奮を与えました。重賞初勝利の喜び、天皇賞での大逃げ劇、そして惜敗の悔しさ。すべてが、この馬の生涯を彩る、忘れられない思い出となりました。その勇姿は、今もなお語り継がれ、競馬史に名を残す一頭として記憶されています。

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