パトリック・クリバーン

パトリック・ロネイン・クリバーン：南軍の勇将

パトリック・ロネイン・クリバーン（Patrick Ronayne Cleburne, 1828年3月16日 - 1864年11月30日）は、アイルランド系イギリス人で、アメリカ南北戦争において南軍の少将として活躍した軍人です。その卓越した戦術眼と勇猛さから、「西のストーンウォール」と称えられました。

初期の経歴

クリバーンは、アイルランドのコーク県で、医者の息子として生まれました。幼くして両親を亡くし孤児となりますが、父の跡を継ぎ医学を志しました。しかし、トリニティ・カレッジ医学部の入学試験に失敗したことをきっかけに、軍隊への道を選びます。イギリス軍第41歩兵連隊に配属され、伍長まで昇進しましたが、3年後には除隊しアメリカへ移住しました。

オハイオ州で短期間過ごした後、アーカンソー州ヘレナに移住し薬剤師として働き始めました。社交界にも受け入れられ、1860年にはアメリカに帰化し法律家としての活動も開始、地元住民からの信頼も厚く、同じく南軍の将軍となるトマス・C・ヒンドマンとは親友となりました。

南軍への従軍

南北戦争勃発の危機が迫る中、クリバーンは迷うことなく南部諸州を支持しました。その理由は奴隷制を支持したからではなく、自身を受け入れてくれた南部の人々への愛着からでした。クリバーンは地元の民兵隊に入隊し、すぐに大尉に選出され、アメリカ軍の弾薬庫を占領する作戦を指揮しました。アーカンソー州がアメリカ合衆国から脱退すると、クリバーンは第1アーカンソー歩兵連隊の大佐となり、後に准将へと昇進しました。

クリバーンは、シャイローの戦いやリッチモンドの戦い、ペリービルの戦いなど、数々の激戦に参加し、その卓越した指揮能力を発揮しました。ストーンズリバーの戦いでは、自らが率いる師団を率いて北軍を押し戻す活躍を見せ、少将に昇進しました。

1863年、チカマウガの戦いでは夜間攻撃を成功させました。また、チャタヌーガの戦いでは、トンネル・ヒルの防衛戦で北軍を撃退し、その勇名を轟かせました。クリバーンの師団は、この戦いで特別な青色の師団旗を授与され、その勇猛さを讃えられました。リングゴールドギャップの戦いでは、後退する南軍の殿軍を務め、多くの兵士を救出しました。これらの功績から、クリバーンはアメリカ連合国議会から公式に感謝状が贈られました。

クリバーンの戦術的な才能は、その後の戦いでも発揮され、その活躍から「西のストーンウォール」という異名を得ました。北軍兵士たちは、クリバーンの師団の青い旗を見るだけで恐れをなしたと言われています。

奴隷解放の提唱と戦死

戦争が進むにつれ、クリバーンは南軍の劣勢を認識し、奴隷を解放して南軍に入隊させることで戦力を増強する提案をしました。しかし、この提案は多くの人々から反発され、アメリカ連合国大統領ジェファーソン・デイヴィスの命令によって取り消されました。この一件が、クリバーンが昇進できなかった理由の一つだとされています。しかし、ウェストポイント（アメリカ陸軍士官学校）の出身ではなかったことやアイルランド出身であったことも要因として考えられています。

1864年、クリバーンはスーザン・タールトンとの婚約をしますが、結婚式を挙げることはありませんでした。同年11月30日、テネシー州フランクリンでの戦闘で、クリバーンは部隊の突撃を指揮中に戦死しました。クリバーンは攻撃が無謀だと反対したものの、受け入れられず、自ら剣を振るい北軍の塹壕に向かって進撃する姿が目撃されたのが最後でした。北軍の前線近くで発見され、手当てを受けましたが、腹部を銃弾で撃ち抜かれたのが致命傷となり亡くなりました。

遺産

クリバーンの遺体は、一旦テネシー州の教会に埋葬されましたが、後にアーカンソー州ヘレナのメイプルヒル墓地に改葬されました。かつてクリバーンが指揮した部隊の上官であったウィリアム・J・ハーディは、クリバーンの死を悼み、「クリバーンの師団が守る場所は、破られることはなく、攻撃するところは、彼らの墓場を除いて、全てを圧倒した。」と語りました。

クリバーンの名声は、今もなお多くの場所に残っています。アラバマ州とアーカンソー州には、クリバーン郡という地名が存在し、テキサス州にはクリバーン市やパット・クリバーン湖が彼の名を冠しています。パトリック・クリバーンは、その勇猛さと卓越した指揮能力で、アメリカ南北戦争史にその名を深く刻んだ英雄の一人として、人々の記憶に残り続けています。

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