ペリービルの戦い

ペリービルの戦い：南北戦争におけるケンタッキーの激戦

ペリービルの戦いは、1862年10月8日に、アメリカ南北戦争の重要な局面であるケンタッキー方面作戦のクライマックスとして、ケンタッキー州ペリービルの西、チャップリンヒルズで繰り広げられた戦闘です。この戦いは、南軍のブラクストン・ブラッグ将軍率いるミシシッピ軍が、北軍のドン・カルロス・ビューエル少将のオハイオ軍の一部に対して戦術的勝利を収めました。

しかし、戦闘後間もなくブラッグ軍がテネシー州へ撤退したため、境界州であるケンタッキー州は戦争終結まで北軍の支配下に置かれることとなり、戦略的には北軍の勝利と見なされています。この戦いは、ケンタッキーの戦いとも呼ばれることがあります。

戦いの経緯

10月7日、ブラッグ軍を追撃していたビューエル軍は、ペリービルに集結。北軍は、スプリングフィールド・パイクで南軍騎兵と小競り合いを始め、ピーターズヒルでは両軍が水資源を求めて激突しました。翌日の夜明け、ピーターズヒル周辺で戦闘が再開。北軍師団が前進するも、南軍の猛攻を受け、北軍左翼は後退を余儀なくされました。しかし、北軍は増援により戦線を安定させ、南軍の攻撃は散発的に終わりました。その後、南軍がスプリングフィールド・パイクで攻勢に出るも、反撃を受けペリービルへ撤退。北軍が追撃し小競り合いが起こる中、南軍の左翼は脅かされる形となりました。

兵力と物資の不足に直面したブラッグは、夜間に撤退を開始。カンバーランド渓谷を通って東テネシーまでの後退を続けました。

両軍の損害を考慮すると、ペリービルの戦いは南北戦争における最も流血の多い戦いの一つであり、ケンタッキー州においては最大の戦闘となりました。

1862年のケンタッキー方面作戦

ケンタッキー州は、南部と北部の境界に位置し、その戦略的要衝性から、両軍にとって重要な州でした。リンカーン大統領も「ケンタッキー州を失うことは、戦争全体を失うことに近い」と述べています。

当初、州議会は中立を宣言していましたが、南軍のレオニダス・ポーク少将がコロンバスを占領したことで中立は破られました。その後、両軍はケンタッキー州の中立を尊重せず、南軍の暫定州都がボウリング・グリーンに置かれました。

南軍のカービー・スミス少将は、ケンタッキー州での新兵募集と物資調達を狙い、ケンタッキー州侵攻を主導しました。ジョン・ハント・モーガン大佐の騎兵襲撃成功がそれを後押ししました。

ブラッグ将軍は、当初ミシシッピ州のコリンスを奪還するか、中部テネシーでビューエル軍と対峙するかを検討していましたが、スミス軍との合流を選択。複雑な鉄道輸送で兵力を移動させました。しかし、スミスの東テネシー方面軍は独立した指揮系統を持ち、ブラッグの作戦遂行を困難にしました。

スミスとブラッグは作戦を練り、スミスの部隊がケンタッキー州へ進攻し、その後ブラッグ軍が合流してビューエル軍を撃破するという計画を立てました。しかし、スミスはブラッグとの合意を破り、単独で北進。ブラッグはスミスが単独で行動することでビューエル軍に各個撃破される可能性を懸念しました。

スミスは8月13日にノックスビルから北進、ブラッグは8月27日にチャタヌーガを出発。これは、ロバート・E・リー将軍の北バージニア方面作戦と同時期であり、南軍にとって最大規模の同時攻勢となりました。

一方、ビューエル軍はナッシュビルに集結し、ルイビルを目指すブラッグ軍と競争を開始。ブラッグはマンフォードビルで北軍の砦を占領し、スミス軍と合流。ビューエルはルイビルに到着し、北軍を再編・補強しました。ビューエルはシル准将にフランクフォートを攻撃させ、ブラッグとスミスの合流を妨害しようとしましたが、ブラッグはスミスと合流し、南軍知事就任式に出席。しかし、砲声によって式典は中断されました。

対戦した戦力

北軍：ビューエル率いるオハイオ軍は、約55,000名。マクックの第1軍団、クリッテンデンの第2軍団、ギルバートの第3軍団で構成されました。しかし、新兵が多く訓練不足でした。

南軍：ブラッグ率いるミシシッピ軍は、約16,800名。ポーク指揮の右翼と、ハーディ指揮の左翼に分かれていました。

前哨戦

ブラッグは9月28日にフランクフォートに向けて出発し、10月3日には、北軍部隊の接近により東方への後退を余儀なくされました。10月7日、ビューエル軍がペリービルに到着し、南軍は防衛線を構築。水源確保の重要性から、ペリービル周辺の支配を目指しました。ビューエルは10月8日に攻撃を計画していましたが、軍団の動きが鈍く、攻撃は延期されました。ビューエルは負傷のため、戦況を十分に把握できない状況にありました。ハーディはペリービルを防御拠点とし、3本の道路を抑える布陣をとりました。

戦闘の経過

10月8日早朝、両軍の前哨部隊がドクターズ・クリークで交戦。その後、北軍がピーターズヒルを確保するも、南軍の反撃により後退しました。ブラッグはペリービルで敵を打ち破ると想定していましたが、ポークは防御に徹しました。ブラッグは戦況を把握するためペリービルに到着。戦線を再編し、北軍左翼への攻撃を計画しました。

午後12時半、南軍の砲撃が開始。ブラッグはチーザム師団を移動させ、北軍の側面を突こうとしましたが、北軍はオープンノブに砲兵隊を配置。南軍は正面攻撃を余儀なくされました。南軍のドネルソン旅団がチャップリン川を渡り攻撃を開始しましたが、北軍の十字砲火を受け大きな損害を出して撤退。マニー旅団がオープンノブに突撃し、北軍兵を追い払いましたが、スタークウェザー大佐の強力な砲兵陣地により撃退されました。

中央部では、アンダーソン師団の攻撃が開始。ジョーンズ旅団が北軍の砲火で薙ぎ倒され、ブラウン旅団がその後を継ぎましたが、効果的な攻撃はできませんでした。左翼では、ジョンソン旅団がチャザム・ハウスヒルから攻撃。友軍の砲火に苦しみながら丘を駆け上がりましたが、北軍の反撃で後退。クリバーン旅団が攻撃に加わりましたが、南軍は砲火と混乱に苦しみました。リトルは負傷し、捕虜になりました。

シェリダン師団は戦闘終盤まで参戦せず、南軍のパウェル旅団を撃退。カーリン旅団が追撃し、ペリービルへ突入。ワグナー旅団も合流し、町の交差点を確保しましたが、ギルバートの命令で前進が止められました。

ディックスビル交差点では、激しい戦闘が展開。南軍はマクック軍団を包囲しようとしましたが、北軍の抵抗で鈍化。南軍のポークが自軍を友軍と誤射する事件も発生しました。北軍は戦線を安定させましたが、マクック軍団は大きな損害を受けました。

戦いの後

北軍の損害は4,276名、南軍は3,401名でした。ブラッグは戦術的勝利を得たものの、戦略的劣勢を悟り、夜間に撤退を開始しました。ブラッグはハロッズバーグでスミス軍と合流しましたが、ケンタッキー州での新兵は得られず、兵站も不足していたため、テネシー州に撤退。その後、ジェファーソン・デイヴィス大統領に釈明を求められ、軍の指揮官を交代させようとしましたが、結局ブラッグは指揮官に留まりました。

ビューエルはブラッグ軍に対する追撃を怠ったため、リンカーン政権の不興を買い、西部方面軍が再編されることになりました。10月24日、カンバーランド方面軍が創設され、ビューエルのオハイオ軍は第14軍団に再編。ビューエルは委員会による調査を受け、軍歴を終えることになりました。

ペリービルの戦いの後、ケンタッキー州は終戦まで北軍の支配下に置かれました。歴史家のマクファーソンは、ペリービルの戦いを「戦争の大きな転回点の一部」と捉え、南北戦争における重要な戦いと位置付けています。ペリービル戦場跡の一部は、ペリービル州立歴史史跡として保存されています。

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