ストーンズリバーの戦い

ストーンズリバーの戦い：激戦の記録

ストーンズリバーの戦い、別名「第二次マーフリーズボロの戦い」は、南北戦争の西部戦線において、1862年 12月31日から1863年 1月2日にかけて、テネシー州中部で繰り広げられた激戦です。この戦いは、両軍ともに非常に高い損害率を記録し、南北戦争の中でも特に激しい戦いの一つとして知られています。

戦いの背景

1862年 10月8日のペリービルの戦いで敗北した南軍のブラクストン・ブラッグ将軍率いるミシシッピ軍は、ケンタッキー州まで撤退し、エドムンド・カービー・スミス少将の軍隊と合流しました。これにより、ブラッグ軍は38,000名の古参兵からなる強力な軍隊となりましたが、主導権を取り戻す動きは見られませんでした。一方、北軍のドン・カルロス・ビューエル少将も受動的であり、ブラッグ軍を攻撃しようとしませんでした。

不満を募らせたブラッグは、カンバーランド渓谷を通って撤退し、テネシー州マーフリーズボロに陣を構えました。この地は、豊かな農業地帯であり、南軍の食料調達に重要な場所でした。また、北軍がチャタヌーガに進行するのを阻止する戦略拠点としても重要でした。ブラッグは、ここで軍隊を再編成し、防御陣地を構築しました。

一方、北軍ではエイブラハム・リンカーン大統領がビューエルの受動的な姿勢に不満を抱き、ウィリアム・ローズクランズ少将を新たな指揮官に任命しました。ローズクランズは、第14軍団（後にカンバーランド軍と改称）をナッシュビルに進め、ブラッグ軍に対して積極的に行動するよう命じられました。しかし、ローズクランズは軍の再編成と訓練、補給を優先し、12月26日になってようやくブラッグ軍を追撃するために進軍を開始しました。

戦闘の展開

12月29日、ローズクランズ軍がマーフリーズボロに到着するまでに、南軍は既に1ヶ月間もこの地域に滞在していました。ローズクランズ軍は、総勢約45,000名、対するブラッグ軍は約38,000名でした。両軍の戦力は拮抗しており、勝敗の行方は不透明でした。

12月30日、両軍は4マイルにわたって対峙しました。両軍の指揮官は、翌日の作戦として、敵の右翼を包囲して背後に回り、本隊から切り離すという似たような計画を立てていました。このため、勝利は先に攻撃を開始した方に有利になる可能性がありました。ローズクランズは朝食後に攻撃を開始する予定でしたが、ブラッグは夜明けとともに攻撃を開始しました。

12月31日、午前6時頃、南軍のウィリアム・J・ハーディ軍団が北軍の右翼を攻撃しました。この攻撃は北軍を大きく後退させ、戦線は鉄道やナッシュビル・パイクのある方向に押し込まれました。ローズクランズは、戦場を駆け巡り、部隊を指揮しましたが、その制服は友人の返り血で覆われていました。南軍は、ポーク軍団も投入し、シェリダン少将の師団に激しい攻撃を加えましたが、シェリダンは早朝に攻撃を予測し、部隊を準備させていたため、南軍の攻撃を一時的に食い止めました。しかし、シェリダン師団の弾薬が底を突き、後退を余儀なくされました。北軍は、ナッシュビル・パイクで再集結し、新たな戦線を構築しました。

南軍の攻撃は、その後も続きましたが、ウィリアム・B・ヘイズン大佐の旅団が「地獄の半エーカー」と呼ばれる場所で奮戦し、南軍の攻撃を食い止めました。ローズクランズの強い指導力と部隊の再集結により、北軍は戦線を安定させることができました。この日の戦闘は、両軍にとって大きな損失を出し、ブラッグは勝利を確信していましたが、実際には北軍も持ちこたえていました。

1月1日は、両軍共に休息と傷の手当にあて、比較的静かな一日でした。1月2日には、ブラッグがブレッキンリッジの部隊に川を渡って北軍の陣地を攻撃するよう命じましたが、この攻撃はメンデンホール大尉の指揮する北軍砲兵隊の集中砲火により、大損害を出して失敗に終わりました。

1月3日、ローズクランズ軍は援軍を受け、戦力を増強しました。ブラッグは、ローズクランズ軍が補強され続けると判断し、また雨で増水した川で軍隊が分断される可能性を恐れ、マーフリーズボロからの撤退を開始しました。

戦いの結果と影響

ストーンズリバーの戦いは、両軍合わせて23,515名もの死傷者を出し、南北戦争の主要な戦闘の中でも最大級の損失率を記録しました。この戦いは、戦術的には引き分けに終わりましたが、南軍が撤退したことで、北軍の勝利とみなされました。この戦いは、北軍の士気を大いに高め、エイブラハム・リンカーン大統領は、ローズクランズ将軍に「貴方は我々に得難い勝利をもたらした。それが敗北であれば、この国は生存し続けられなかったであろう」と賞賛しました。また、中部テネシー州における南軍の脅威は無くなり、北軍は次の作戦へと進むことができました。

ストーンズリバーの戦いの戦場跡は、現在、ストーンズリバー国定戦場跡として保存されており、南北戦争の重要な史跡となっています。この戦いを象徴する「地獄の半エーカー」や、アメリカ最古の南北戦争記念碑であるヘイズン旅団の記念碑、そして6,000名以上の北軍兵士が眠るストーンズリバー国立墓地などがあります。

この戦いは、南北戦争の転換点の一つとして、その後の戦局に大きな影響を与えました。戦場跡は、今もなお、歴史の重みを伝えています。

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