パフォス

キプロス、パフォスの歴史と神話

パフォスは、キプロス南西海岸に位置する都市で、その歴史は古く、新石器時代から人々の営みがありました。旧パフォス（パレパフォス）と新パフォス（ネアパフォス）がありましたが、現在では新パフォスのみが市街地として機能しています。この地は、愛と美の女神アフロディーテ誕生の伝説が残る場所であり、古代から重要な信仰の地でした。現在では、パフォス国際空港を有し、観光都市としても栄えています。

アフロディーテの誕生と伝説

ギリシア神話において、アフロディーテは海の泡から生まれ、キプロスに降り立ったとされています。パフォス近郊のペトラ・トゥ・ロミウ（「ギリシアの岩」）は、彼女が誕生した地とされ、紀元前1200年頃にはアフロディーテを祀る巨大な神殿が建てられました。現在残っているのはわずかな円柱のみですが、古代におけるこの場所の重要性を示しています。

パポスの創成

伝説によれば、パポスという名前は、ピュグマリオーンとガラテイアの子パポスに由来するとされています。また、パポスと血縁関係にあったキニュラースが、この名にちなんで都市を建設したとも伝えられています。このパポス、キニュラースの出自については諸説あり、神話に彩られた興味深い人物像が語り継がれています。

聖パウロの訪問

1世紀には、使徒パウロがパフォスを訪れ、布教活動を行ったとされています。『使徒行伝』には、パウロが地方総督府があったパフォスで布教した様子が記されています。キプロスの伝承では、パウロが鞭打たれたとされる柱がアギア・キリアキ・クリソポリティッサ教会に残っています。

ディゲニス・アクリタスの伝説

中世ビザンティン世界の叙事詩『ディゲニス・アクリタス』には、主人公ディゲニスがキプロスに現れたサラセン人を撃退するため、トロードス山の大岩を投げつけ、それがペトラ・トゥ・ロミウの岩になったという伝説があります。この伝説もまた、パフォスの歴史に深みを与えています。

パフォスの地理と歴史

パフォスはパフォス地区の中心都市であり、丘の上に位置する居住区クティマと、海岸沿いのリゾート区カトパフォスから構成されています。古代には、ミケーネ人が神殿を建設し、アフロディーテ崇拝の中心地として繁栄しました。紀元前3世紀には、ニコクレス王によって新都が建設され、ネアパフォスが誕生しました。ヘレニズム時代には、プトレマイオス朝によってキプロスの首都とされ、ローマ時代にもその重要性は維持されました。

東ローマ帝国の時代に首都がニコシアに移ると、パフォスの政治的な影響力は低下しましたが、1974年のキプロス問題以降、観光地として再開発が進められ、1980年にはユネスコの世界遺産に登録されました。

世界遺産としてのパフォス

世界遺産に登録されたパフォスは、カトパフォスの遺跡群、クークリア村のアフロディテ神殿、そしてネクロポリスを含みます。

カトパフォスのアフロディテ神殿都市

カトパフォスには、ディオニュソスの家、テセウスの家、オルフェウスの家、アイオンの家といった貴族の邸宅跡が残っており、ヘレニズム期からビザンティン期にかけてのモザイクが有名です。

ディオニュソスの家: 神話の場面やブドウの収穫を描いたモザイクで飾られた邸宅です。
テセウスの家: テセウスとミノタウロスなどのモザイクが残る大規模な建物で、行政官の邸宅だったと考えられています。
オルフェウスの家: オルフェウスやヘラクレスを描いたモザイクがある邸宅です。
アイオンの家: ディオニュソスの誕生や神話の場面を描いたモザイクが発見されています。

サランダ・コロネス

7世紀にパフォス港を防御するために建てられたビザンティン様式の城砦です。地震で崩壊しました。

パフォス城

1[[3世紀]]にフランク人が建設した城砦で、後にオスマン帝国によって修復されました。現在は歴史的建造物として保護されています。

アギア・キリアキ・クリソポリティッサ教会

4世紀に創建された教会で、聖パウロが鞭打たれたとされる柱が残っています。

クークリア村のアフロディテ神殿

パレオパフォスがあった場所に位置し、アフロディテ崇拝の中心地として栄えました。神殿遺跡や発掘された遺物は、クークリア考古学博物館に展示されています。

カトパフォスのネクロポリス

紀元前3世紀に建てられた地下墓地で、ドーリア式の柱が特徴的です。実際には王墓ではなく、上級官僚の墓だと考えられています。

パフォスの登録経緯と基準

パフォスは、その神話性、歴史的な重要性、そして文化的な価値が評価され、ユネスコの世界遺産に登録されました。特に、アフロディーテ崇拝に関連した神殿都市としての普遍的な価値が認められています。

登録基準としては、以下の2点が挙げられます。

現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連すること。

スポーツと交通

かつてはAEパフォスというサッカークラブがありましたが、現在はパフォスFCが活動しています。交通機関としては、パフォス国際空港があり、ヨーロッパ各地からの便が発着しています。市内交通はバスが中心で、他都市との間を結ぶバスも運行されています。

パフォスは、神話と歴史が深く結びついた魅力的な都市です。古代の遺跡や美しい海岸線は、訪れる人々を魅了し続けています。

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