パブロ・ネルーダ

パブロ・ネルーダ

パブロ・ネルーダ（原名：リカルド・エリエセール・ネフタリ・レジェス・バソアルト）は、1904年7月12日にチリで生まれた。彼は詩人、外交官、政治家として多才な一生を送り、その作品は世界中で愛されている。彼が文壇に名を刻むきっかけとなったのは、チェコの詩人ヤン・ネルダから取ったペンネームであり、後にこの名を自身の本名として採用したことである。ネルーダは、チリの国民的詩人として広く知られている。

生涯の背景

ネルーダは、バスク系チリ人の家に生まれ、若い頃から詩作に興味を持った。1934年には外交官としてスペインに赴任し、ここでスペイン内戦を経験することになった。この悲劇的な出来事は、彼を共産主義に接近させ、人民戦線やスペイン共和国の支持に向かわせた。1945年にはチリの上院議員に当選し、同時に共産党にも入党したが、1948年にビデラ政権によって共産党が非合法化され、彼は国外逃亡を余儀なくされた。この亡命生活は、映画『イル・ポスティーノ』のテーマ曲にもなった。

彼の政治との関わりは続き、1958年には共産党が再び合法となった。しかし、1970年の大統領選挙では、共産党の候補としての立候補を辞退し、社会党のサルバドール・アジェンデが左派統一候補を名乗った。アジェンデの当選は、チリで初めての民主的な社会主義政権の誕生を意味し、ネルーダはその後、駐仏大使に任命される。彼は1971年にノーベル文学賞を受賞したが、健康状態が悪化し、1972年に大使の職を辞任して帰国した。

しかし1973年9月11日、ピノチェト将軍率いる軍によるクーデターが発生し、ネルーダの家は襲撃された。兵士たちによって蔵書は破壊され、家は徹底的に損壊された。この一連の出来事は彼に大きなショックを与え、病状は急激に悪化した。9月23日、彼は病院に運ばれる途中、軍の検問によって止められるという不運に見舞われ、到着が遅れて死亡に至った。チリでは「彼は病気で死に、クーデターで魂を殺された」との言葉が語られ、ネルーダの死因については長年病死とされてきたが、後に毒殺説も浮上した。

2013年、ネルーダの遺体が調査のために掘り起こされ、毒物は検出されなかったものの、当時の状況から完全には解明されていない。さまざまな仮説や疑問が残る中、彼の死は今なおミステリーとして語り継がれている。

作風と影響

ネルーダの文学は、彼独特の視点や比喩に満ちており、自然や愛に関する詩が評価されている。特に「マチュピチュの高み」、「女のからだ」などの作品は、彼の代表作とされ、詩人としての地位を固めた。ノーベル賞を受賞した際、ガブリエル・ガルシア＝マルケスは「どの言語の中でも20世紀の最高の詩人」と称えた。

ネルーダは、性に関するテーマを多く扱ったため、批判を受けることもあったが、彼の詩は南米の文化の中で特に親しまれ、詩の朗読会も盛況で行われている。特に有名な作品「100の愛のソネット」は、彼の恋愛観を表現しており、多くの人々に響いている。また、ベトナム戦争に関する批判的な詩「ニクソンサイドのすすめ」にもその姿勢が見られ、社会問題に目を向けた詩人としての一面が生かされている。

ネルーダの家は、現在ではチリの観光名所となり、多くの人々が彼の業績を称えに訪れる。彼の詩は今もなお、多くの人々に影響を与え続けている。

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