パヤオ王国

パヤオ王国（タイ語: อาณาจักรพะเยา, ラテン文字転写: Xāṇācạkr Phayeā）は、現在のタイ王国パヤオ県一帯に存在した古王国です。その歴史は、肥沃なパヤオ湖周辺の台地を基盤としていますが、険しい山々に囲まれた地理的条件から、近隣のチエンラーイやチエンコーンといった都市以外との交流は困難でした。

歴史を紐解くと、パヤオの起源には複数の説が存在します。『ムアン・パヤオ年代記』によれば、12世紀にヒランナコーングンヤーン（現在のチエンセーン）からチョームタム王が移住し、街を築いたとされています。一方、『パヤオ年代記』では、1174年にシンハラート王がこの地に都市を建設したと伝えられています。いずれにせよ、パヤオが歴史の表舞台に登場するのは、1258年に即位したガムムアン王の時代からです。

ガムムアン王の治世下、パヤオ王国は目覚ましい発展を遂げました。彼はスコータイのラームカムヘーン王、ラーンナーのマンラーイ王と同盟を結び、三国間の強固な連携を築き上げました。この同盟関係は、パヤオが周辺地域において確固たる地位を確立する上で重要な役割を果たしました。ガムムアン王は、背後を固めた上でナーンのカーオ王国へ侵攻し、その首都プワを占領しました。そして、プワには自らの子とチエンセーン出身の妃を送り込み、統治させましたが、後にこれはカーオのパーノーン王によって奪還されました。

しかし、『ナーン年代記』には、ガムムアン王が軍事的に非常に強力であったと記録されており、この時代のパヤオ王国の勢力を物語っています。ガムムアン王の死後、カムデーン王が即位しました。カムデーン王はチエンマイのチャイソンクラーム王がクン・クルアの反乱に苦しんでいた際、援軍を派遣しました。その見返りとして、チャイソンクラーム王は自分の娘をカムデーン王の子であるカムルーに嫁がせました。カムルーは後にパヤオ王となります。

しかし、カムルーの後を継いだカムプー王の時代（1334-36年）に、パヤオは大きな転換期を迎えます。カーオ王国の支援を受けたチエンマイのカムフー王によって、パヤオは支配下に置かれることになりました。その後、パヤオはチエンマイの王によって任命された国主が統治するようになりますが、重要な都市であったため、有力な家臣や王族が国主として配置されることが多かったようです。また、パヤオはカーオ王国やプレー王国への進出の足掛かりとしても利用されました。

このように、パヤオ王国は13世紀に最盛期を迎えましたが、その後、周辺の大国に影響されながらその歴史を歩みました。豊かな土地と湖に恵まれたこの地は、農業を中心とした生活が営まれ、その文化的遺産は今日にも受け継がれています。

参考資料:

The Chiang Mai Chronicle. trans. David K. Wyatt and Aroonrut Wichienkeeo (2nd Edition ed.). Chinag Mai: Silkworm Books. (1998). ISBN 9747100622
The Nan Chronicle. trans. and ed. by David K. Wyatt. Ithaca: Cornell University. (1994). ISBN 087727715X
* Ongsakul, Sarassawadee (2005), History of Lan Na, trans. Chitraporn Tanratanakul, Chian Mai: Silkworm Books, ISBN 9749575849

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