パリところどころ

『パリところどころ』：ヌーヴェルヴァーグの巨匠たちが描く、パリの街の六つの物語

1965年、フランスで生まれた『パリところどころ』(仏題: Paris vu par…)は、ヌーヴェルヴァーグを代表する6人の監督がそれぞれ独立した短編を制作したオムニバス映画です。パリの街の様々な場所を舞台に、個性豊かな6つの物語が展開されます。単なる観光案内ではなく、監督たちの視点を通して描かれるパリの多様な顔は、観る者の心に深く刻まれることでしょう。

六つの視点、六つのパリ

この映画は、レ・フィルム・デュ・ローザンジュ社によって製作されました。同社は、エリック・ロメールとバルベ・シュレデールが1962年に設立した会社で、同年には連作「六つの教訓話」も制作しています。『パリところどころ』は、サン・ドニ街、北駅、サンジェルマン・デ・プレ、エトワール広場、モンパルナス、そしてラ・ミュエットという、パリの象徴的な場所を舞台に物語が展開されます。さらに、パリ郊外のルヴァロワも舞台の一つとなっています。

それぞれの監督は、それぞれの場所を題材に、独自の感性と技法で物語を紡ぎ出しています。ジャン＝ダニエル・ポレ、ジャン・ルーシュ、ジャン・ドゥーシェ、エリック・ロメール、ジャン＝リュック・ゴダール、クロード・シャブロルという、ヌーヴェルヴァーグを代表する錚々たる監督陣が参加していることも、この映画の大きな魅力です。

制作には、のちに映画プロデューサーとして成功を収めるステファーヌ・チャルガジェフやピエール・コトレルといった人材が携わっており、若き日のネストール・アルメンドロスも撮影監督の助手として参加しています。俳優のパトリック・ボーショーもアソシエイト・プロデューサーとして参加しています。これらの才能が集結したことで、この映画は高い芸術性を誇るものとなりました。

1964年の秋に撮影が終了し、1965年には第15回ベルリン国際映画祭で上映されました。フランスでは同年5月19日に公開され、その後日本でも1993年に初公開されました。日本での公開は、シネクラブやホール上映を経て、日本ヘラルド映画による配給によって実現しました。その後も、2004年にはDVDが発売され、2005年にはリバイバル上映が行われるなど、現在でも高い人気を誇る作品となっています。

関連作品とその後

『パリところどころ』は、2006年に製作されたオムニバス映画『パリ、ジュテーム』にも影響を与えています。この映画は、パリの各区を舞台にした18話からなる作品で、『パリところどころ』のプロデューサーであるシュレデールも出演しています。また、1984年には、『二十年後のパリところどころ』(日本公開タイトル：『新パリところどころ』)という作品が製作され、シャンタル・アケルマンやフィリップ・ガレルといった監督たちが参加しました。

『パリところどころ』は、単なるオムニバス映画にとどまらず、ヌーヴェルヴァーグの精神と、パリという街の魅力を凝縮した、まさに時代を超える名作と言えるでしょう。それぞれの監督の個性と、パリの街の多様な表情が織りなす、魅力的な作品をぜひご覧ください。

もう一度検索