ジャン＝ダニエル・ポレ

ジャン＝ダニエル・ポレ：ヌーヴェルヴァーグの異才

ジャン＝ダニエル・ポレ（Jean-Daniel Pollet, 1936年6月20日 - 2004年9月9日）は、フランスの映画監督、脚本家です。ヌーヴェルヴァーグの初期にその才能を開花させ、『酔っぱらってりゃ…』やオムニバス映画『パリところどころ』の一篇「サンドニ街」などの作品で、映画史にその名を刻みました。ポレの作品は、実験的な映像表現と詩的な作風が特徴で、観る者を独特な世界へと誘います。

生涯

1936年、フランス北部のラ・マドレーヌで、上流ブルジョワの家庭に生まれたポレは、パリ政治学院に進学しますが、映画への情熱から中退。動物ドキュメンタリーやサントロペのルポルタージュ映画を制作した後、兵役を経て映画界に入ります。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『殺人狂想曲』で助監督を務めた後、1957年に短編映画『酔っぱらってりゃ…』で監督デビューを果たしました。

『酔っぱらってりゃ…』と初期作品

ポレの初期作品の中でも特に注目されるのが、『酔っぱらってりゃ…』です。パリ郊外のダンスホールを舞台に、踊る人々を捉え、その中から一人去っていく男を追うというシンプルな構成ながら、バーレスクとメランコリーが混ざり合った独特の世界観を創り上げました。この作品は、1958年のヴェネツィア国際映画祭で短編部門最優秀賞を受賞し、ポレは一躍脚光を浴びることになります。また、この作品に登場するクロード・メルキ演じる「レオン」は、ポレの初期作品における重要なキャラクターとなりました。

1960年には長編デビュー作『La Ligne de mire (照準線)』を完成させますが、配給会社がつかず、劇場公開には至りませんでした。しかし、翌年にはレオン・シリーズの第二作となる短編『Gala (ガラ)』を発表し、作曲家アントワーヌ・デュアメルとの長きにわたるコラボレーションを開始しました。デュアメルはその後、ジャン＝リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーの作品でも音楽を担当し、映画音楽家としての地位を確立しました。

中期以降の作品と詩的な作風

ポレの作品は、その実験性と詩的な作風が大きな特徴です。特に、フォルカー・シュレンドルフと共同で制作した中編映画『地中海』は、フィリップ・ソレルスのテキストとアントワーヌ・デュアメルの音楽が組み合わさり、詩的な映画の極致とも言える作品です。ジャン＝リュック・ゴダールは、自身の作品でこの作品を引用し、ポレにオマージュを捧げました。また、ポレは詩人フランシス・ポンジュの作品にも影響を受け、『神のみぞ知る』ではポンジュの詩を朗読し、その世界観を映像で表現しました。

晩年と遺作

1989年に撮影中の事故で重傷を負い、一時は生命の危機に瀕しましたが、奇跡的に回復。しかし、その後の体調は優れず、2004年に68歳でこの世を去りました。ポレの遺作となった『Jour après jour (日々)』は、ジャン＝ポール・ファルジエが監督を務め、ポレ自身が撮影した自宅や四季折々の風景、果物、花などの映像で構成されています。この作品は、ポレの最後の姿を捉えた貴重な記録であり、彼の映画に対する情熱を今に伝えるものです。

フィルモグラフィー（主な作品）

『酔っぱらってりゃ』 Pourvu qu'on ait l'ivresse... (1958) 短編
『La Ligne de mire』 (1960) 長編
『Gala』 (1961) 短編
『地中海』 Méditerranée (1963) 中編
『パリところどころ』 Paris vu par... （第一話 サンドニ街 Rue Saint-Denis）(1965)
『SF惑星の男』 Le Maître du temps (1970)
『アクロバット』 L'Acrobate (1976)
『神のみぞ知る』 Dieu sait quoi (1994)
* 『Jour après jour』 (2006) 遺作

ジャン＝ダニエル・ポレは、その生涯を通じて、常に新しい映画表現を追求し続けた映画監督でした。彼の作品は、今なお多くの映画ファンを魅了し、その影響は色褪せることはありません。

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