パレット (絵画)

パレット（調色板）についての詳細

パレットとは、絵画を描く際に用いる板で、絵具を混ぜたり配置したりするための道具です。一般的には調色板とも呼ばれますが、現代日本語ではこの用語はそれほど普及していません。パレットの語源はフランス語の「palette」に由来し、これは「小さな鍬」を意味し、絵具を混ぜるための小道具としての歴史を感じさせます。

基礎的な意味でのパレット

パレットにはさまざまな素材が用いられます。油絵具向けのパレットは、合成樹脂、大理石、御影石、そして木材が一般的です。一方、水性絵具の場合には、合成樹脂、金属、陶器が多く使われます。また、使い捨ての紙パレットも存在し、これを選ぶ画家もいます。興味深いことに、実験的な画家たちはさまざまなものを代用してパレットを作ることがあります。例えば、鳥海青児は菓子箱の蓋を使用していました。

水性絵具用のパレットには閉じられるタイプもあり、特に透明水彩絵具に適しています。ガッシュや不透明水彩には向かないことが多いです。伝統的な木製のパレットは色の見え方に着目したときに便利ですが、現代の顔料の使用状況を考慮すると、あまり推奨はされていません。

絵具を選ぶ際には、その成分に含まれる顔料が重要なポイントとなります。専門的な製品では、使用されている顔料が明示されており、特にカラーインデックスが記載されていることが信頼性の一環とされています。

パレットの構造

パレットの形状もさまざまで、粘度の高い絵具を使用する場合、一枚板の仕切りのないパレットが適しています。しかし、水彩絵具やテンペラのように粘度が低い絵具を使う際には、仕切りや凹みが必要です。このように、パレットは使用される絵具の特性に合わせて設計されています。

発展的な意味でのパレット

ある芸術家が選ぶ絵具や色彩の組み合わせそのものも「パレット」と呼ばれます。画家にとってパレットはただの調色板ではなく、個々の好みやスタイルを示す重要な選択肢でもあります。

著名画家のパレットとパレット画

著名画家のパレットには、その画風や特徴が如実に現れます。中には、パレット上に自らの好きなモチーフを描く「パレット画」を制作する芸術家もいます。例えば、日本の笠間日動美術館は346名の画家から357点のパレットを収蔵し、約200点が常設展示されています。これは世界的にも貴重なコレクションです。創設者の長谷川仁は、1967年にモーリス・ユトリロのパレットに興味を持ち、パレットの収集を始めました。

彼のコレクションは、友人の日本の画家に「パレットに絵を描いて譲ってほしい」と声をかけた結果、160点を集めたものです。さらに、国外からはパブロ・ピカソやサルバドール・ダリからもパレットが提供されました。ユトリロのパレットは特に印象深く、2010年に購入した際は著名な画商の遺族からのものです。

ある画家のパレット、木村忠太のものでは、絵具が11センチメートルの高さで盛り上がっていました。また、ピエール＝オーギュスト・ルノワールやアンリ・ルソーは、パレットを常に清潔に保つことで知られています。特にルノワールは、自分のパレットを他者に見せることを極端に好まなかったと言われています。

ペイントツールのパレット

現代のデジタルアートにおいても「パレット」という言葉は使われています。PhotoshopやSAIなどのペイントツールにおいては、色を作り出したり、その色を一覧で表示するためのウィンドウが「パレット」と呼ばれています。このように、パレットは伝統的な絵画制作の枠を超えて、デジタル芸術の世界にも影響を与えています。

参考文献

1. グザヴィエ・ド・ラングレ著　黒江光彦訳 - 『油彩画の技術 増補・アクリル画とビニル画』
2. マックス・デルナー著 他 - 『絵画技術体系』
3. 佐藤一郎著 - 『絵画技術入門 テンペラ絵具と油絵具による混合技法 (新技法シリーズ) 』
4. クルト・ヴェールテ著 他 - 『絵画技術全書』
5. 森田恒之監修 他 - 『カラー版 絵画表現のしくみ 技法と画材の小百科』

また、関連項目には「硯」も挙げられます。

もう一度検索