パンドリカが開く

パンドリカが開く：時空の裂け目と壮大な陰謀

「パンドリカが開く」は、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第5シリーズを代表するエピソードです。2010年6月19日にBBC Oneで放送されたこの物語は、続く「ビッグバン」と二部作を形成し、シリーズ全体における重要な転換点となっています。脚本はスティーヴン・モファット、監督はトビー・ヘインズが担当しました。

物語は、タイムトラベラーであるリヴァー・ソングが11代目ドクターとエイミー・ポンドを102年のブリタニア、ストーンヘンジへと呼び出すところから始まります。リヴァーは、ストーンヘンジ地下に存在するパンドリカと呼ばれる牢獄に、宇宙で最も危険な存在が封じ込められていると警告します。

しかし、パンドリカの正体は、ドクターのタイムマシン、ターディスの時空の裂け目から宇宙を守るため、敵対勢力連合が仕掛けた罠であることが明らかになります。この罠は、ドクターを抹消することを目的としています。

さらに、宇宙から消滅していたと思われていたエイミーの婚約者、ローリー・ウィリアムズも再登場します。しかし、彼はオウトンという異星人の意識によって操られていることが判明し、物語に新たな緊張感をもたらします。

壮大なスケールと緻密なプロット

モファットは、このエピソードを壮大で狂気的なものにすることを目指しました。撮影は本物のストーンヘンジとレプリカセットで行われ、Upper Boat Studiosで制作された地下セットは、シリーズ最大規模を誇ります。ヘインズ監督は、セットの雰囲気を盛り上げるため、『インディ・ジョーンズ』シリーズの音楽を使用するなど、細部にまでこだわった演出を施しました。

本作では、複数の敵対勢力が初めて同盟を組むという、シリーズ初の試みも取り入れられています。製作チームは、番組に登場した象徴的なモンスターたちを最高の状態で映像化することに成功しています。

イギリスでの視聴者数は757万人を記録し、Appreciation Index は88という高評価を得ました。批評家からも高い評価を受け、2011年のヒューゴー賞映像部門短編部門を受賞しています。

シリーズ全体の伏線と繋がり

「パンドリカが開く」は、シリーズ全体の物語に深く関わっています。第5シリーズ第1話「11番目の時間」で語られた「時空はひび割れた。パンドリカが開き、大いなるサイレンスが訪れる」という予言は、本作に直接繋がっています。また、リヴァー・ソングとの過去の出来事や、ターディス爆発の絵など、以前のエピソードに登場した要素が、この物語の中で重要な役割を果たしています。

リヴァーのタイムラインにおいて、「パンドリカが開く」は「天使の時間」や「肉体と石」よりも前に位置し、物語全体のタイムパラドックスを複雑にしています。サイレンスという存在についても、このエピソードでその存在が示唆され、後のシリーズで重要な役割を果たす伏線となっています。

制作における苦労と工夫

本作の制作は、厳しい寒波や、ストーンヘンジでの撮影における制限など、多くの困難を伴いました。ストーンヘンジでの撮影は、わずか一夜と朝の1時間という限られた時間で行われました。また、地下セットの撮影では、照明やセットデザインに工夫が凝らされ、独特の雰囲気を作り出しています。

俳優陣も、馬に乗ったシーンや、サイバーマンとの戦闘シーンなど、様々な困難な撮影に挑みました。特に、サイバーマンの描写には、錆びついた質感や、フランケンシュタインの怪物のような動きなど、細やかな工夫が施されています。

放送と批評家の反応

「パンドリカが開く」は、イギリスで高い視聴率を記録し、批評家からも絶賛されました。壮大なスケール、緻密なプロット、そして感動的な人間ドラマが評価され、シリーズにおける重要なエピソードとして位置付けられています。ガーディアン紙、デイリー・テレグラフ、ラジオ・タイムズ、IGN、SFX誌など、多くのメディアが本作を高く評価しました。

特に、敵対勢力の同盟、クライマックスでの衝撃的な展開、そしてエイミーとローリーの関係性が多くの批評家から称賛されています。また、本作と「ビッグバン」は、2011年のヒューゴー賞映像部門短編部門を受賞するなど、高い評価を得ています。

まとめ

「パンドリカが開く」は、壮大なスケール、複雑なプロット、そして感動的な人間ドラマが融合した傑作エピソードです。『ドクター・フー』シリーズの中でも、特に重要な位置を占める作品であり、その高い評価は、制作陣の努力と、俳優陣の熱演によって支えられていると言えるでしょう。

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