パーフェクト・キス

ニュー・オーダーの隠れた名曲「パーフェクト・キス」：その魅力とヴァージョン遍歴

1985年、ニュー・オーダーは彼らのキャリアにおいて重要な転換点を迎えるシングル「パーフェクト・キス (The Perfect Kiss)」を発表しました。それまでシングルカットされた楽曲をアルバムに収録したことがなかった彼らにとって、これは初の試みでした。ただし、例外的に米国盤『Power, Corruption & Lies』には「Blue Monday/The Beach」が収録されています。ファクトリー・レコードからリリースされたこのシングルは、全英チャートで46位を記録、決して大ヒットとはなりませんでしたが、後のニュー・オーダーのライブにおける重要なレパートリーとして、現在まで愛され続けています。

アルバム『ロウ・ライフ』収録、そしてライブでの復活

「パーフェクト・キス」は、ニュー・オーダーのアルバム『ロウ・ライフ』に収録されました。このアルバムは、バンドのサウンドにおける新たな方向性を示した作品であり、「パーフェクト・キス」はその象徴的な一曲と言えるでしょう。興味深いことに、長らくライブでは演奏されていませんでしたが、2006年以降、セットリストに復活。「ブルー・マンデー」と共にライブのハイライトを飾る存在となりました。そのパフォーマンスは、初期の楽曲とは異なる、成熟したバンドの演奏を聴くことができる貴重な機会となっています。

独特なミュージックビデオ：メンバーによるスタジオライブ演奏

ジョナサン・デミ監督によるミュージックビデオは、ニュー・オーダーの他の作品とは一線を画すものです。他のビデオ作品で見られるような凝った演出はなく、メンバーによるスタジオライブ演奏が最初から最後まで収められています。演奏されているのは12インチ・ヴァージョンで、約10分間の長尺演奏となっています。このビデオでは、リズムセクションが打ち込みであるにもかかわらず、スティーヴン・モリスはドラムに加えジリアン・ギルバートと共にキーボードを演奏。ピーター・フックはベースとシンセパーカッション、バーナード・サムナーはギター、ボーカル、そしてカウベルを担当しています。さらに、スタジオの壁にはジョイ・ディヴィジョンのポスターが貼られているのが確認でき、バンドの歴史とルーツを感じさせる演出となっています。

複数のヴァージョンが存在する魅力：シングル、アルバム、そして『サブスタンス』

「パーフェクト・キス」には、ライブヴァージョンを除いて3つのヴァージョンが存在します。まず、最初に発表された12インチ・ヴァージョンは、リズムマシンのパーカッションから始まり、ピーター・フックのベースソロが絡む特徴的なイントロが魅力です。2つ目は、アルバム『ロウ・ライフ』やベストアルバム『ザ・ベスト・オブ・ニュー・オーダー』『シングルズ』などに収録されているヴァージョンで、12インチ・ヴァージョンを編集したと推測されます。このヴァージョンでは大サビの部分がカットされているため、シングルヴァージョンとアルバムヴァージョンでは楽曲に対する印象が大きく異なります。特に大サビ部分には、この曲のテーマ「Perfect Kissとは何か？」に関する歌詞が含まれているとされ、その違いはリスナーに多様な解釈を促します。3つ目は、初期のベストアルバム『サブスタンス』に収録されているヴァージョンで、最後のフッキーのベースソロのバッキングシンセサイザーのリフが、12インチヴァージョンとは異なっています。さらに、曲の途中ではカエルやヒツジの鳴き声が聞こえるなど、独特の雰囲気を持っています。オリジナルの12インチ・ヴァージョンは、現在ではアナログレコードでしか入手できない貴重な音源となっています。

12インチシングルとカップリング曲：隠れた名曲たち

12インチシングルには、「パーフェクト・キス」に加え、「キッス・オブ・デス (The Kiss of Death)」と「パーフェクト・ピット (Perfect Pit)」が収録されています。「キッス・オブ・デス」は「パーフェクト・キス」のインストゥルメンタルミックスで、『サブスタンス』にも収録。「パーフェクト・ピット」はベースとドラムのみによるシンプルなヴァージョンで、楽曲の骨格を際立たせています。これらのカップリング曲もまた、「パーフェクト・キス」の魅力を様々な角度から楽しめる貴重なトラックです。日本でも日本コロムビアから12インチシングルがリリースされており、海外盤と同じ内容でした。

まとめ：時代を超えて愛される一曲

「パーフェクト・キス」は、単なる一曲ではなく、ニュー・オーダーの音楽性と歴史を深く理解するための重要な鍵となる作品です。複数のヴァージョンが存在することで、リスナーはそれぞれのヴァージョンから異なる魅力を発見し、楽曲への理解を深めることができます。ミュージックビデオも、バンドのライブパフォーマンスをダイレクトに伝えることで、リスナーとバンドを繋ぐ役割を果たしています。この曲は、時代を超えて愛され続けるに相応しい、ニュー・オーダーの真骨頂と言える一曲なのです。

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