ヒゲペンギン(Pygoscelis antarctica)
ヒゲ
ペンギンは、
ペンギン科
アデリー[[ペンギン]]属に分類される中型の
ペンギンです。
南極大陸周辺に広く分布し、その個体数は
ペンギン類の中で最も多いとされています。特徴的なのは、喉を通る黒い帯模様で、これが顎ひげのように見えることから和名が付けられました。英名では「Chinstrap Penguin」と呼ばれ、これも同様に顎紐のような模様に由来しています。
分布
ヒゲ
ペンギンは、
南極半島の周辺から
南アメリカの南端にかけての地域に多く見られます。繁殖地は
南極周辺の島々や
南極半島に集中しており、そのつがいの数は約750万組と推定されています。非繁殖期には外洋で生活し、主に
オキアミや小魚を捕食します。
形態
体長は約71cmから76cm、体重は4kgから7kg程度で、
ペンギンの中では中くらいの大きさです。
羽毛は背側が黒く、腹側が白いのが特徴です。足はピンク色をしており、顔は白いですが、目は黒く、さらに目の後ろから喉を通る黒い帯模様が際立っています。この模様が、和名と英名の由来となっています。
学名の種小名「antarctica」は、
南極を意味しています。かつて日本では、
南極の
ペンギンといえばヒゲ
ペンギンを指すことが一般的で、「ナンキョク
ペンギン」という和名で紹介された書籍も存在しました。
生態
ヒゲ
ペンギンは、一日の大半を沿岸海域での採餌に費やします。主な餌は
オキアミで、他の
ペンギンと同様に、食べられる限り採餌を行います。
オキアミが豊富にいる場合は
潜水時間も短く、1分程度ですが、
オキアミが少ない場合はより深く潜り、ハダカイワシなどを狙います。他の
ペンギンに比べて夜間
視力が優れているため、夜間には日中よりも深く
潜水することが可能です。最深
潜水記録は179mですが、必要に応じてさらに深く潜ることができます。
天敵としては、
ヒョウアザラシ、オオトウゾク
カモメ、ミズナギドリなどが挙げられます。特に
ヒョウアザラシは、水中で待ち伏せしたり、水際で襲ったりするため、ヒゲ
ペンギンの個体数に大きな影響を与えています。また、
カモメやサヤハシチドリは、ヒゲ
ペンギンの
卵を狙うこともあります。ヒゲ
ペンギンは、他の
ペンギンよりも逃げるのが不得意で、特に幼鳥は犠牲になりやすいです。野生下では20年生きる個体もいますが、平均
寿命は12歳未満とされています。
繁殖行動
ヒゲ
ペンギンは、
アデリー[[ペンギン]]やジェンツー
ペンギンと同様に、
夏に繁殖期を迎えます。
雪が溶けた岩場に小石を円形に積み上げて
巣を作るという点は共通していますが、他の
ペンギンが避けるような斜面にも
巣を作るのが特徴です。また、性格が攻撃的で、繁殖地が重なる他の
ペンギンを追い払うことがあります。
卵は1個から3個産まれ、多くの場合2個です。他の
ペンギンはオスが最初に抱
卵しますが、ヒゲ
ペンギンはメスが最初に抱
卵します。抱
卵は5日から10日おきに交代で行われ、産
卵から約35日後にヒナが
孵化します。ヒナは1ヶ月ほど
巣に留まり、その後、ヒナ同士の集団であるクレイシュに集まって生活します。クレイシュでは、親鳥から給餌を受けながら2ヶ月ほど過ごし、成鳥の
羽毛に換羽すると海へと旅立ちます。
近年、キングジョージ島でヒゲ
ペンギンの
睡眠行動が観察されました。それによると、ミナミオオトウゾク
カモメなどの天敵への警戒から、親鳥は平均4秒程度と短い
睡眠を細切れにとっていることがわかりました。
日本で飼育する水族館
日本国内では、以下の水族館でヒゲ
ペンギンを飼育しています。
名古屋港水族館
アドベンチャーワールド
長崎ペンギン水族館
横浜・八景島シーパラダイス
参考文献
デイビット・サロモン『ペンギン・ペディア』(河出書房新社、2013年)151-163頁 ISBN 978-4-309-25284-1
関連項目
ペンギン
南極
外部リンク
BirdLife International 2004. Pygoscelis antarcticus. In: IUCN 2006. 2006 IUCN Red List of Threatened Species.