ヒシアケボノ

ヒシアケボノ：電撃の巨漢、その栄光と悲劇

1992年2月27日、アメリカで生まれたヒシアケボノ。550キロを超える巨体で知られた競走馬は、日本競馬史にその名を刻む存在となりました。圧倒的な体躯から「電撃界の巨漢横綱」と称され、多くの競馬ファンを熱狂させました。

1994年秋に東京競馬場でデビュー。初勝利は1995年7月と時間はかかりましたが、その後4連勝という快挙を達成し、一気にオープン入りを果たします。京王杯オータムハンデキャップや東京盃では惜しくも3着、6着と結果を残せませんでしたが、続くスワンステークス（芝1400m）では1分19秒8という日本レコードを樹立し、勝利を掴みました。この勝利は、その後の活躍を予感させるものでした。

続くマイルチャンピオンシップでは人気を集め3着に入線。そして、スプリンターズステークスでは1番人気に応え、GIレース初制覇。560キロというJRA史上最高馬体重でのGI勝利は、2024年現在も破られていません（地方競馬では2016年東京大賞典優勝馬アポロケンタッキーの565キロが記録されています）。この活躍により、1995年度の最優秀短距離馬に選出されました。

1996年は、スプリントGI連勝を目指して高松宮杯に出走するも、フラワーパークに敗れ3着。安田記念では12番人気と低評価でしたが、逃げ戦術で3着に入りました。しかし、夏に休養を取った後のスワンステークスでは、レース当日の馬体重が30キロ増の580キロと大幅に増加し、11着に終わります。続くマイルチャンピオンシップでもさらに体重が増加し、15着と低迷。スプリンターズステークスでは体重を落として出走しましたが、出遅れにより4着という結果に終わりました。

1997年はバーデンバーデンカップで5着に入るも、その後は凡走が続き、同年のスプリンターズステークスを最後に現役を引退。種牡馬としての道を歩み始めます。

ヒシアケボノは、その巨体ゆえに競馬ファンから大きな注目を集めました。大相撲の横綱・曙太郎を彷彿とさせるその風貌と、レース毎に増減する体重は、競馬場や場外馬券売場での大きな話題となりました。馬体重発表時には、しばしばどよめきや歓声が起こるほどでした。

種牡馬となったヒシアケボノは、千葉県印旛郡のJBBA日本軽種馬協会下総種馬場、その後は茨城県の東京大学農学部付属牧場で繋養され、種付けを行いました。しかし、2008年10月頃から体調を崩し、11月17日にJRA競走馬総合研究所に移送されましたが、2日後の11月19日に病死。その死因は詳細不明のまま、多くのファンに惜しまれつつ、その生涯を閉じました。種牡馬としての活躍は目覚ましいものではありませんでしたが、2013年のフェアリーステークスを制したクラウンロゼの母父として、重賞勝ち馬を輩出しています。

ヒシアケボノは、その圧倒的な体格と、短距離レースでの驚異的なスピード、そして多くのファンを魅了した個性的な存在として、日本競馬史に名を残す競走馬でした。その短いながらも華々しい経歴、そして謎に包まれた最期は、今もなお語り継がれています。半弟にはアグネスワールド、甥には2003年クイーンアンステークス勝ち馬のDubai Destinationがいます。主戦騎手は角田晃一でした。彼の活躍は、多くの競馬ファンの記憶に深く刻まれています。

もう一度検索