ヒジャーズ

ヒジャーズの概要

ヒジャーズ（アラビア語: الحجاز al-Ḥijāz）は、アラビア半島の紅海沿岸地域に位置し、イスラム教の重要な聖地が存在する場所である。具体的には、マッカ（メッカ）とマディーナ（メディナ）の二大聖地がこの地域にあり、歴史的、宗教的、政治的に多くの国々に影響を与えてきた。

地理的特徴

ヒジャーズ地方は今日のサウジアラビア王国の北西部に相当し、ヒジャーズ山脈とアスィール山脈がこの地域を形成している。ヒジャーズ山脈はヨルダンとの国境近くから始まり、マッカ周辺では600m程度にまで低くなる。西麓には急斜面があり、海に直面して断崖が形成され、天然の良港はほとんど存在しない。一方で、時折発生する嵐が土壌の肥沃さをもたらすため、この地域には豊かな農業地帯が広がる。

ヒジャーズの気候は乾燥しており、いくつかの涸れ川（ワジ）が流れている。人々はオアシスや涸れ川近くで農業を行い、マディーナが最も大きなオアシス都市として知られている。ヒジャーズは「障壁」を意味し、南西のティハーマや東のナジュドとの分界線として機能している。

歴史的背景

古代からヒジャーズには人々が住み、農業を営んでいた。この地域は香料を運ぶ重要な交易路に位置し、古代ローマ時代にはイエメンから物資を運ぶために軍が派遣されたこともあった。ヒジャーズはイスラム帝国の発祥地でもあり、イスラム教徒にとって特に重要な場所である。

13世紀以降、ヒジャーズはエジプトの支配やオスマン帝国の影響を受け、マッカの太守としてハーシム家が自治を行っていた。しかし、第一次世界大戦中に状況は変わり、ハーシム家のフサイン・イブン・アリーはイギリスと共にアラブ反乱を起こす。この反乱はオスマン帝国からヒジャーズを解放することを目指したものであり、トーマス・エドワード・ロレンス（アラビアのロレンス）の支援を受けて進行した。

1916年、フサイン・イブン・アリーはイギリスの支援を受けてヒジャーズ王国を建国したが、その短命な統治はすぐに終わりを迎える。1924年、アブドゥルアズィーズ・イブン＝サウードが侵攻し、フサイン・イブン・アリーは退位を余儀なくされ、ヒジャーズの支配が終了した。

アブドゥルアズィーズ・イブン＝サウードは1926年にヒジャーズ王を名乗り、1931年にはヒジャーズとナジュドを統合した王国を成立させ、その後サウジアラビア王国に改名された。このように、ヒジャーズの歴史は宗教の中心地であるだけでなく、政治的な変革の舞台でもあった。

まとめ

ヒジャーズはアラビア半島において独特の地理的、歴史的な重要性を持つ地域であり、現在もなお宗教的関心が高い地となっている。数世紀にわたる人々の活動、交易、戦争の歴史が交差するこの地は、今後も多くの人々にとって重要な場所であり続けるだろう。

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