ヒトスジシマカ

ヒトスジシマカについて

ヒトスジシマカ（学名: Aedes (Stegomyia) albopictus）、一般的にはヤブカと呼ばれるこの蚊は、特に吸血性が強いことで知られています。特徴的な外見を持ち、胸部の背面には一本の白い正中線とW字状の斑点が見られます。他のシマカ類と違い、気門後域の白鱗斑がなく、中胸背板の前側には白い筋が見られません。また、中胸背側の翅基部上部の鱗斑は広く、銀白色の鱗片でできています。全体の体長は約4.5mmであり、黒い体に白い縞模様が印象的です。

かつては日本国内の北限が秋田県や岩手県とされていましたが、最近ではその生息域を北向きに広げています。最も注目すべき点は、ヒトスジシマカがデング熱などの感染症を媒介する能力を持っていることです。このため、公共の健康に対する脅威が増していることが懸念されています。

繁殖と生態

ヒトスジシマカはかつて、雑木林や竹林の樹の洞など自然の水溜まりで繁殖していましたが、現在では人々の生活圏に近い場所、藪や墓地、公園、さらには家庭の植木鉢の受け皿などの人工的な水溜まりでも見ることが多くなりました。一般的に、これらの蚊は50〜100mの範囲を移動し、その行動範囲は植生の存在する都市部では100〜300mになると推測されています。

ヒトスジシマカの活動期は5月から11月とされており、主に昼行性ですが、特に早朝と夕方に活発に行動します。雌の蚊が血を吸うのは、産卵のための栄養を得るためであり、オスは血を吸うことはありませんが、メスに近づくために人間に飛来します。通常、オスとメスは花の蜜や草の汁を主な食料としています。

人間との関わり

ヒトスジシマカは日本国内で最も一般的に見られる吸血性の蚊の一種で、特に殺虫剤の試験に利用されることがあります。この蚊はデング熱、ジカ熱、西ナイル熱、チクングニア熱、黄熱といったさまざまな感染症の媒介者としても知られています。吸血の際にヒトの皮膚に湿疹を引き起こすことから、衛生的に問題ある害虫ともされ、さらには犬糸状虫症の原因としても知られています。

このヒトスジシマカはまた、世界中の侵略的外来種ワースト100に指定されています。元々は東アジアから北アメリカに輸入された古タイヤの雨水内にいたボウフラが、アメリカ合衆国で定着し、その後わずか10年ほどでヨーロッパや中南米、中東などへと拡大したと考えられています。これにより、世界的に広がる熱帯病の蔓延が懸念されているのです。

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