熱帯病

熱帯病とは

熱帯病とは、主に熱帯および亜[[熱帯]]地域で発生・流行する感染症の総称です。これらの地域では、温暖な気候と豊富な雨量により、病原体や媒介生物が繁殖しやすく、感染が広がりやすい環境にあります。温帯地域でも発生する可能性はありますが、冬期に昆虫などの活動が制限されるため、流行規模は比較的小さくなります。

媒介生物と感染経路

多くの熱帯病は、蚊やハエなどの昆虫が媒介生物となり、病原体を宿主間で移動させます。これらの媒介生物は、寄生虫、細菌、ウイルスなどを運び、ヒトや動物に感染を引き起こします。感染は、主に媒介生物に刺されたり噛まれたりする際に、血液を介して病原体が体内に入ることで起こります。

ワクチンと治療

熱帯病の中には、ワクチンが開発されていないものや、治療法が確立されていないものも多く存在します。そのため、対症療法による治療が中心となる場合が少なくありません。

熱帯病増加の要因

近年の熱帯病の増加には、以下のような要因が考えられます。

熱帯雨林の開発や森林破壊
入植や移民の増加
航空網の発達による熱帯地域への旅行者の増加

これらの要因により、感染が拡大しやすくなっていると考えられます。

顧みられない熱帯病

熱帯病が流行する発展途上国や内戦地域では、医療体制や物資が不十分な場合が多く、病気の蔓延を食い止めることが困難です。さらに、治療薬や治療法がない病気に対して、患者の多くが貧困層であるため、製薬会社などが治療薬の研究開発に投資することが進んでいません。これらの病気は「顧みられない熱帯病」と呼ばれています。

世界保健機関（WHO）の取り組み

世界保健機関（WHO）は、1975年から「熱帯病特別研究訓練計画（TDR）」を通じて、アフリカ、アジア、中南米における顧みられない熱帯病の対策を進めています。現在、TDRが対象としている主な病気は以下の通りです。

シャーガス病
デング熱
寄生虫症
アフリカ睡眠病
リーシュマニア症
ハンセン病
象皮病
マラリア
糸状虫症（オンコセルカ症）
住血[[吸虫症]]
性感染症
HIV関連結核
結核

TDR対象外の顧みられない熱帯病

TDRの対象となっていない顧みられない熱帯病も多数存在します。主な病気としては、以下のものが挙げられます。

鉤虫感染症
鞭虫症
トレポネーマ症
ブルーリ潰瘍
メジナ虫症
レプトスピラ症
桿虫症（糞虫症）
吸虫症
神経嚢虫症
疥癬
フラビウイルス感染症

気候と熱帯病

熱帯病は、かつてヨーロッパでは「異国病」とも呼ばれていました。熱帯地域は高温多湿な環境であるため、人獣共通[[感染症]]の病原体が環境中に多く存在し、媒介生物である昆虫も多数生息しています。これらの環境条件が、病原体の維持や感染拡大を助長していると考えられます。また、熱帯地域には発展途上国が多く、社会経済的な要因も感染拡大に影響を与えています。

地球温暖化の影響

近年、地球温暖化の影響により、熱帯病の感染地域が拡大しています。高地や山岳地帯、過去に感染例のあった高緯度地域（アメリカ合衆国南部や地中海沿岸など）でも熱帯病の発生が見られるようになっています。例えば、コスタリカのモンテベルデでは、地球温暖化により地形によって生じる雲が厚くなり、カエルツボカビ症の病原体が増加し、カエルの一種であるモンテベルデ・ハーレクイン・フロッグの個体数減少を招いています。

まとめ

熱帯病は、熱帯・亜[[熱帯]]地域特有の感染症であり、気候変動や社会経済的な要因が複雑に絡み合って発生・拡大しています。顧みられない熱帯病の問題や、地球温暖化による感染地域の拡大など、課題は山積しています。これらの問題に対処するためには、国際的な協力と、より一層の研究開発が不可欠です。

参考文献

世界保健機関（WHO）

関連項目

熱帯医学
渡航医学
感染症
顧みられない病気
水系感染症
ブッシュミート
旅行者下痢
熱帯気候

外部リンク

WHO Neglected Tropical Diseases
WHO Operational research in tropical and other communicable diseases
* Drugs for Neglected Diseases Initiative

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