ヒト胎盤性ラクトゲン

ヒト胎盤性ラクトゲン（hPL）について

ヒト胎盤性ラクトゲン（ヒトたいばんせいラクトゲン、英: human placental lactogen、略称: hPL）またはヒト胎盤性乳腺刺激ホルモン（英: human chorionic somatomammotropin、略称: HCS）は、妊娠中の胎盤から分泌されるポリペプチドホルモンです。1963年に発見されたこのホルモンは、他の哺乳類にも存在し、特に人間の妊娠において重要です。

hPLの構造

hPLは、191個のアミノ酸残基から成る一本鎖のポリペプチドで、分子量は約22,125です。分子内には2つのジスルフィド結合と8つのヘリックスが存在し、その結晶構造は、2.0 Åの分解能のX線回折法によって明らかにされました。この特殊な構造が、hPLの多様な生理作用に寄与しています。

hPLの濃度と変動

hPLは妊娠中にのみ存在し、その濃度は胎児と胎盤の成長とともに増加します。特に出産が近づくにつれ、母体内のhPL濃度は最高に達し、通常5-7 mg/Lとなります。また、双子やそれ以上を妊娠している場合、その濃度はさらに高くなります。興味深いことに、hPLは胎児の血液にはほぼ取り込まれず、血中の半減期は約15分と短いです。

生理作用

hPLは妊娠中の母体の代謝に多岐にわたる影響を及ぼします。特に、以下のような作用があります。

• - 糖質・脂質の代謝調節: hPLは母体のインスリン感受性を低下させ、血中のグルコース濃度を上昇させます。これにより、母体は多くのインスリンを分泌し、グルコースの消費を抑制し、胎児に栄養を供給します。また、脂肪分解を促進し、遊離脂肪酸の供給を増大させます。この遊離脂肪酸は母体のエネルギー源として利用される一方で、胎児がより多くのグルコースを利用できるようにします。
• - 授乳の影響: 実験では、hPLが乳腺を発達させるプロラクチンと類似の作用を示すことが知られていますが、hPLが具体的に授乳にどう寄与するかは依然として明らかになっていません。

医学検査におけるhPL

hPLは、妊娠初期において切迫流産や胞状奇胎の診断指標として有効です。また妊娠後期から末期にかけては、胎児と胎盤の機能をモニターする指標として利用されます。

結論

hPLは妊娠中の重要なホルモンであり、母体の代謝調節や胎児への栄養供給に関与しています。体内の濃度変化やその機能は、女性の健康や妊娠の管理において重要な役割を果たします。今後の研究によって、hPLの具体的な機能や影響がさらに明らかになっていくことが期待されます。

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