ヒポグリシン

ヒポグリシンとは

ヒポグリシン（hypoglycin）は、ライチやアキーといった特定の果実に含まれる天然の有機化合物です。特に果実部分に多く蓄積されていることが知られています。アミノ酸の一種であり、リシンと構造が類似しています。ヒポグリシンは、摂取すると人体に毒性を示すことがわかっており、ジャマイカ嘔吐病の主要な原因物質として知られています。

毒性のメカニズム

ヒポグリシンは、リシンの代謝に関わる酵素に競合的に結合します。これにより、リシンの代謝が阻害され、結果としてヒポグリシン自体や、その代謝物であるMCPA（メチレンシクロプロピル酢酸）が毒性を示すと考えられています。

MCPAは、アシルCoAデヒドロゲナーゼという酵素の強力な阻害剤として作用します。この酵素は脂肪酸の代謝に不可欠であり、その働きが阻害されることで、脂肪酸の代謝が正常に行われなくなります。この結果、エネルギー産生経路の切り替えがうまくいかなくなり、様々な中毒症状を引き起こします。

症状

ヒポグリシンAを摂取した場合、以下のような症状が現れることがあります。

長期の絶食に対する不耐性: グルコースから脂肪酸酸化へとエネルギー産生経路を切り替えることが困難になります。
ケトン生成障害: エネルギー不足を補うためのケトン体の生成がうまくいかなくなります。
嘔吐、けん怠感、意識消失、昏睡: 重症の場合、意識を失い、昏睡状態に陥る可能性があります。
死: 最悪の場合、死に至ることがあります。
* ジカルボン酸の尿中排泄の増加: これは、ER（小胞体）で起こるω酸化が原因です。

これらの症状は、特に空腹時にヒポグリシンを摂取した場合に顕著に現れやすいとされています。

その他の情報

米国疾病管理予防センター(CDC)は、ライチ果実に関連した疑似ウイルス脳炎の推定原因として、ヒポグリシンの影響を指摘しています。また、ヒポグリシンは、ムクロジ科の果実（レイシ、ランブータン、リュウガンなど）や、アキーなどにも含まれていることが知られています。

注意事項

ヒポグリシンは、摂取量や個人の体質によって影響が異なりますが、特に空腹時の摂取は避けるようにしてください。また、これらの果実を摂取した後に体調不良を感じた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

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