ランブータン

ランブータン (Rambutan)

ランブータン（Nephelium lappaceum L.）は、東南アジアを原産とするムクロジ科の常緑果樹です。その名前は、マレー語の「rambut」（毛）に由来し、果皮を覆う特徴的な棘状の突起を指しています。原産地はマレー群島と考えられていますが、正確な起源地は不明です。同じムクロジ科のレイシ（ライチ）やリュウガンと近縁で、果実の構造もよく似ています。

分布と栽培

ランブータンは、東南アジアの家庭菜園や小規模な果樹園で広く栽培されています。商業栽培も盛んで、特にタイは最大の生産国として知られています。東南アジア以外にも、アフリカ、インド、カリブ海諸島、中米など、熱帯地域で栽培が広がっています。オーストラリアやハワイでも生産が増加しており、世界中で人気が高まっています。

ランブータンの果実は、赤、ピンク、または黄色で、長さ3～8cm程度です。果皮には柔らかい棘が密生しており、内部には甘くジューシーな仮種皮（果肉）が種子を包んでいます。果実は生で食べられるほか、ジャム、ゼリー、缶詰などの加工品にも利用されます。常緑樹であるため、果実が熟すと、緑の葉とのコントラストが美しい景観を作り出します。

栽培には、温暖な熱帯気候が適しており、10℃以下の低温には非常に弱いです。そのため、赤道から南北15度以内の地域で商業的に栽培されています。樹高は8～10mに達しますが、接ぎ木された栽培品種は3～5m程度に抑えられます。有機物を多く含み、水はけの良い傾斜地が栽培に適しています。実生株は酸味が強いことが多いため、接ぎ木、取り木、芽接ぎなどの方法で優良品種のクローンを繁殖させます。種子から育てた場合は、5～6年で実をつけます。現在、熱帯アジアを中心に200以上の栽培品種が存在します。

花と性表現

ランブータンの花は小さく、花弁がありません。円錐状の花序を形成し、株によって雄花のみをつける雄株、雌花のみをつける雌株、両方の花をつける雌雄同株があります。商業栽培では、雌雄同株のクローンが選ばれることが多いです。

果実の特徴

果実は円形から長円形で、果皮は革質で柔らかい棘に覆われています。仮種皮は、種子に密着しているものと剥がれているものがあり、後者の方が食べやすく好まれます。種子は油脂を多く含み、食用油や石鹸の原料にもなります。また、ランブータンの根、樹皮、葉は、医薬品や染料としても利用されます。

ランブータンは年に2回結実し、長い結実期は晩秋から初冬、短い結実期は晩春から初夏です。果実は追熟しないため、樹上で熟させてから収穫する必要があります。収穫された果実は傷みやすく、長期保存には向きません。1本の木から5,000～6,000個、またはそれ以上の果実が収穫でき、重量にすると60～70kgになります。単位面積あたりの収量は、若い果樹園で1haあたり1.2t、成熟した果樹園では20tに達することがあります。受粉管理や品種改良によって収量を増やすことができます。

受粉生態学

ランブータンは、雌雄同株の品種が商業的に多く栽培されています。雌花は蜜を出し、雄花は大量の花粉を生産します。ランブータンの受粉には昆虫が不可欠であり、特にハチが重要な役割を果たします。蜜を集めるハチは、雌花の雄しべに触れて花粉を運び、受粉を促します。自然界では、花粉媒介者が雄花や雌花のどちらかに偏って集まる傾向があるため、受粉率が低くなることがあります。しかし、人為的な受粉を行うことで、結実率を向上させることができます。

訪花昆虫

ランブータンの花には、ミツバチ属、ハリナシバチ属のハナバチ、チョウ、ハナアブ、キンバエなどが集まります。特にトウヨウミツバチは、ランブータンの花から大量の蜂蜜を採取し、受粉にも貢献します。トウヨウミツバチは早朝に活動が活発になり、雄花から花粉を集め、雌花へと移動します。


ランブータンは、その独特の風味と食感で、世界中で愛される果物です。熱帯地域を訪れた際には、ぜひその味を堪能してみてください。

ギャラリー

(画像は省略)

脚注

(脚注は省略)

関連項目

レイシ
ムクロジ科

外部リンク

* ランブータン - コトバンク

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