ヒマティオン

ヒマティオンは、古代ギリシアでキトンの上に着用された、一枚布で作られた上着の総称です。その形状は、長方形の布にドレープを寄せたもので、ベルトやピンを使わずに着付けるのが特徴です。ローマのトガの原型としても知られています。

素材と形状

ヒマティオンは、主に羊毛（冬用）や麻（夏用）で織られていました。大きさは縦1.4メートル前後、横幅3から4.5メートル程度で、長方形の四隅には錘が下げられています。王族などの間では、中国産の厚い絹織物をほどいて織り直した、薄い絹製のヒマティオンも見られました。

着用方法

女性は、キトンやペプロスといったワンピース型の衣服に重ねて、ショールやヴェールのようにヒマティオンを用いました。一方、男性はトゥニカの上に重ねるだけでなく、直接体に巻き付けて着用することもあったようです。通常時に着用するヒマティオンは足首が露出する程度の長さでしたが、羊飼いや狩猟、旅行などの際には、クラミスと呼ばれる丈の短いものが用いられました。

用途

ヒマティオンは、外套として用いられることが多かったですが、女性や富裕層が使用する一方で、貧困層や哲学者は素肌に直接まとっていました。また、ブランケットのように就寝時に体を覆う用途や、経帷子として死体を覆う用途にも使用されました。多様な用途に合わせて素材や着こなしが変化し、古代ギリシアの人々の生活に深く根付いていたことが伺えます。

ローマへの伝播

ヒマティオンは、後にローマに伝わり、トガの原型になったと言われています。ローマでは、女性用のほぼ同型のものがパルラと呼ばれて使用されました。ヒマティオンは、その機能性と美しさから、古代ギリシア・ローマを通じて広く愛用された衣服であったと言えるでしょう。

ヒマティオンは、単なる衣服としてだけでなく、身分や職業、生活様式を表すものでもありました。その多様な用途と着こなしは、古代ギリシア・ローマの文化を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

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