ヒメウツギ

ヒメウツギ（姫卯木）

ヒメウツギ（学名: Deutzia gracilis）は、アジサイ科ウツギ属に属する落葉性の低木です。庭木や鉢植えとして親しまれており、特にその美しい花が特徴です。別名としてチョウセンウツギやヤマウツギなども知られています。また、この植物は日本の固有種であり、日本国内では主に本州の関東地方以西、四国、九州で分布しています。日当たりの良い河岸の岩場など、石灰岩や蛇紋岩が特徴の地質環境でよく見られます。

生育環境と特徴

ヒメウツギは温帯から暖帯にかけて生育し、特に岩場や崖などの特殊な環境でも生き残ることができるたくましさを持つ植物です。樹高は約1メートルほどになり、多くの枝を持ち分枝します。

樹皮は灰色から茶色を帯び、古くなると縦に裂けて短冊状に剥がれ落ちる成長特性を持っています。また、新しい枝は褐色を帯びた緑色で、内部は中空です。

葉は対生し、葉のサイズは長さ4～8.5cm、幅1.5～3cmで、長楕円状披針形または狭卵形の形状です。葉の先端は鋭くとがっており、基部は広くくさび形または円形に広がっています。葉縁は細かい鋸歯状で、表面は星状毛が散らばってざらついていますが、裏面は淡い緑色で星状毛は見られません。

葉柄は長さ3～7mmで、毛はありません。

花と果実

ヒメウツギの花期は主に5月から6月にかけてで、枝先に狭い円錐形の花序が形成され、下向きに多数の白い花を咲かせます。花柄は細く、長さは2～6mmの範囲です。また、萼筒は直径約2mmの半球形で、星状毛が散生しています。花弁は5枚からなり、広倒披針形で、長さは0.7～1cmほどです。

雄蕊は10本あり、それぞれの花糸の長さは不ぞろいで、長いものは7～9mm、短いものは4mmになります。花糸は両側に翼状に広がっており、その先端部分はとがっています。果実は蒴果として、直径3～4mmの椀形の果実を10月に熟させます。種子は褐色の狭長楕円形で、片側には膜状の翼があります。

その他の特徴

ヒメウツギの冬芽は狭卵形で先がとがり、8～10枚の芽鱗に包まれています。仮頂芽が枝先に位置し、副芽は対生する特性があります。葉痕は三角形で、維管束痕は3つ形成されます。

利用

この植物は、庭木や鉢植え、さらには花材として人気があります。装飾植物としての用途も広く、近年ではガーデンデザインの一部として取り入れられることも多く、庭に彩りを加える役割を果たしています。

下位分類

ヒメウツギにはいくつかの下位分類が存在します。例えば、アオヒメウツギ（Deutzia gracilis f. nagurae）は小さな花が特徴で、主に本州の渓流沿いにまれに自生します。ナチウツギ（Deutzia gracilis var. pauciflora）は3～5つの花から成る総状花序が特徴で、和歌山県の那智山で見られることがある珍しい植物です。

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