ヒュンダイ・クーペ

ヒュンダイ・クーペ：躍動感と個性を兼ね備えたクーペの歴史

現代自動車がかつて製造・販売していたスポーツクーペ「ヒュンダイ・クーペ」は、輸出市場によって異なる名称で親しまれていました。日本では「ヒュンダイ・クーペ」として知られていますが、韓国では初代モデルが「ティブロン」、2代目モデルが「トスカーニ」という名前で発売されました。本稿では、この魅力的なクーペの歴史と特徴を詳細に解説します。

混迷を極めるモデル名

まず、ヒュンダイ・クーペのモデル名について、混乱を招きやすい点を明確にしておきましょう。文献によっては、「ティブロン」を初代、「ティブロン・タービュランス」を2代目、「トスカーニ」を3代目と記述しているものも見られます。しかし、正確には、「ティブロン」とそのフェイスリフト版である「ティブロン・タービュランス」が初代、「トスカーニ」が2代目にあたります。本稿ではこの分類に則って記述を進めます。

初代：ティブロン（1996年 - 2001年）

1996年4月、現代自動車はアバンテ（J2プラットフォーム）をベースとしたスポーティなクーペ、「ティブロン」を発表しました。フロントエンジン・前輪駆動方式を採用し、パワートレインには2.0L直列4気筒 DOHCベータエンジンを搭載。後に1.8L、販売地域によっては1.6Lエンジンもラインアップに加わりました。トランスミッションは5速MTと4速ATが用意されました。注目すべきは、ポルシェとの共同開発によるマクファーソンストラット式サスペンションです。

1999年5月には、フロントマスクやバンパーなどを変更したフェイスリフトモデル「ティブロン・タービュランス」が登場。エンジンラインナップに変更はありませんでした。

モータースポーツにおいても活躍しました。ヒュンダイは英国のモータースポーツ・ディベロップメント社(MSD)と協力し、[ラリー]]参戦用「ティブロンF2キットカー」を開発。イギリスでは1998年に「F2」、1999年に「F2エボリューション」という特別仕様車が発売されました。さらに、アジアパシフィックラリー選手権]二輪駆動部門で優勝、FIA 2.0リッターカップで年間2位を獲得するなど、その性能の高さを証明しました。米国SCCAプロ[[ラリーでは、四輪駆動に改造したティブロンがマニュファクチャラーズ選手権を6連覇という輝かしい成績を残しています。なお、この初代モデルは日本市場には正規輸入されませんでした。

2代目：トスカーニ（2001年 - 2008年）

2001年9月、ヒュンダイは初代ティブロンの後継モデルとして「トスカーニ」を発表しました。このモデルは、2.7L V型6気筒 DOHCデルタエンジン、2.0L直列4気筒 DOHCベータエンジン、1.6L直列4気筒エンジンの3種類のエンジンが設定され、地域によってラインナップが異なりました。トランスミッションは5速MT、6速MT、4速ATが用意されました。

日本市場では2002年4月2日、「ヒュンダイ・クーペ」として発売されました。日本仕様車は2.7L V6エンジンを搭載し、6速MTまたはスポーツモード付き4速ATが組み合わされました。

2004年9月と2006年10月にはマイナーチェンジを実施。バンパー、灯火類、ホイールなどのデザイン変更や、HIDヘッドランプ、VDC、パワーブレーキシステムの採用など、更なる改良が加えられました。日本市場では2007年3月から後期型が導入されました。トヨタ・セリカやホンダ・インテグラといった競合車種が販売終了したこともあり、300万円を切る価格設定で一定の成功を収めました。しかし、2008年6月頃に輸入販売が終了しました。

韓国ではチューニングベースとしても人気があり、2.7Lモデルをベースとした改造車も多く見られました。日本でも専門誌で紹介されたり、チューニングメーカーがカスタムカーを製作するなど、高い人気を誇っていました。

ヒュンダイ・CCS：実現しなかったオープンモデル

2003年には、カルマン社の協力の下、トスカーニをベースとした4人乗りオープンカー「ヒュンダイ・CCS（Coupe Convertible Study）」が発表されました。東京モーターショーなどでも展示されましたが、残念ながら市販化には至りませんでした。

車名に込められた意味

最後に、各モデル名の由来について触れておきます。「クーペ」はフランス語で2人乗りの箱形馬車を意味します。「ティブロン」はスペイン語で「サメ」、「タービュランス」は英語で「乱気流」、「トスカーニ」はイタリアのトスカーナ地方を指しています。それぞれの名前から、スポーティでエキサイティングなイメージが感じられます。

ヒュンダイ・クーペは、個性的なデザインと優れた走行性能で、多くのファンを魅了しました。日本市場における販売期間は短かったものの、その存在感は、現代自動車の歴史において重要な位置を占めています。

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