ヒルデブラント

ドイツ伝説の英雄、ヒルデブラント

ヒルデブラントは、ドイツの伝説に登場する英雄であり、ゲルマンとスカンディナヴィアの英雄詩で広く知られています。彼の名前は古高ドイツ語と古ノルド語に由来し、「Hild」（戦い）と「brand」（剣）を意味します。

英雄詩におけるヒルデブラント

ヒルデブラントは、以下の著名な詩に登場します。

ヒルデブラントの歌: 古高ドイツ語で書かれた詩で、ヒルデブラントが息子ハドゥブラントと戦う物語が描かれています。
ニーベルンゲンの歌: 中高ドイツ語で書かれた叙事詩で、ヒルデブラントは武具師であり、ベルンのディートリヒの戦友かつ養父的な友人として登場します。
勇士殺しのアースムンドのサガ: 古ノルド語で書かれたサガで、『ヒルデブラントの挽歌』としてヒルデブラントの異母兄アースムンドとの戦いが描かれています。

また、『デンマーク人の事績』など、他の作品にもヒルデブラントが登場します。

ニーベルンゲンの歌における役割

『ニーベルンゲンの歌』では、ヒルデブラントはベルンのディートリヒに仕える武具師であり、彼を支える重要な役割を担っています。作中では、クリームヒルトがハーゲンを殺害したことに憤慨し、彼女を殺害する場面も描かれています。

ヒルデブラントの歌：父と息子の悲劇

『ヒルデブラントの歌』は、『ニーベルンゲンの歌』よりも古い時代の作品であり、ヒルデブラントが息子ハドゥブラントと戦う物語が中心です。ヒルデブラントはディートリヒに仕える前に、妻と子供を故郷に残していました。30年後、彼は故郷に戻りますが、息子のハドゥブラントが領地を治めており、侵略者に対して軍を率いていました。

軍を率いる者同士として、ヒルデブラントとハドゥブラントは互いの家系を尋ね合います。ハドゥブラントは自らを「ヒルデブラントの息子ハドゥブラント」と名乗りますが、ヒルデブラントはすでに死んだと聞かされていたため、目の前の男が自分の父の名を騙っていると思い込みます。

物語はここで失われていますが、伝説や『勇士殺しのアースムンドのサガ』によれば、ヒルデブラントは息子を殺害せざるを得なくなり、自らが殺した戦士を描いてきた赤い盾に、息子の絵を加えることになったとされています。

ヒルデブラントの挽歌：異母兄との戦い

アイスランドに伝わる『ヒルデブラントの挽歌』では、ヒルデブラントが異母兄アースムンドと戦う様子が描かれています。彼は異母兄に瀕死の重傷を負わされ、息子の絵が描かれた盾が傍らに落ちます。ヒルデブラントは異母兄に、自分の身体を覆い、きちんと葬って欲しいと頼みます。

史実との関連

ディートリヒやオドアケルが5、6世紀の歴史上の人物に関連しているにもかかわらず、ヒルデブラント自身が歴史上の人物であるとは特定されていません。

まとめ

ヒルデブラントは、ドイツの伝説に登場する英雄であり、様々な英雄詩に登場することで、その名を知られています。特に、息子ハドゥブラントとの悲劇的な戦いは、多くの人々に語り継がれています。

参考文献

G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年。
* 『サガ選集』日本アイスランド学会編訳、東海大学出版会、1991年。

もう一度検索