ビオゴン

ビオゴン（Biogon）とは

ビオゴンは、ドイツの光学技術者ルートヴィッヒ・ベルテレによって開発された広角レンズであり、ツァイスブランドにおいてその名前が引き継がれている一連の対称型広角レンズを指します。名称は、ギリシャ語で「生命」を意味する「ビオ（Bio）」と、「角度」を意味する「ゴン（Gon）」を組み合わせたものです。

初期のビオゴン

最初のビオゴンは、1934年にゾナーの発展系として設計されました。スペックは35mmF2.4ないしF2.8で、コンタックス用として発売され、当時としてはこの焦点距離において世界で最も明るいレンズでした。ただし、この初期のモデルは、後にビオゴン型として一般的に知られるようになる対称型広角レンズの特徴をまだ完全には備えていませんでした。

対称型広角レンズとしてのビオゴン

その後、ビオゴンは一般的に対称型の広角レンズの名称として定着しました。その原型は、航空用の「アヴィオゴン」を小型写真機用にアレンジしたものであり、特徴的な構成として、周辺光量落ちを緩和するために、レンズの前後端に凹メニスカスレンズが配置された「凹凸(絞り)凸凹」という構成が採用されています。この構成は、樽型の歪曲収差が発生しやすい逆望遠型広角レンズと比較して、歪曲が少ないという利点があります。

しかしながら、バックフォーカスが短いため、一眼レフカメラのミラーアップ機構やデジタルカメラのセンサー周辺の部材との干渉が起こりやすく、それらのカメラに搭載できない場合が多いという制約もあります。

ビオゴンの特徴

ツァイスブランドのレンズの中には、同じ名前でもタイプが大きく異なるものが存在しますが、ビオゴンにおいてはそのような区別はありません。これは、ビオゴンという名称が特定の構成と設計思想を強く反映していることを示しています。例えば、右図（説明では省略）にあるように、日本（コシナ）製の「ビオゴンT2.0/35 ZM」は、その構成がビオゴン型の特徴をよく表しています。

製品ラインナップ

ビオゴンは、様々なマウントや用途に合わせて製品化されています。以下に主な製品ラインナップをまとめます。

アルパ12S/WA用ビオゴン
コンタレックス（Contarex）用ビオゴン
コンタックス（Contax）用ビオゴン
コンタックスG（CONTAX G）用ビオゴン
ハッセルブラッドVシリーズ用ビオゴン
ライカMマウントビオゴン
ソニーEマウントビオゴン
Loxia 2/35 （2014年発売）
大判用ビオゴン
ビオゴン53mmF4.5 - 6×9cm判をカバー
ビオゴン75mmF4.5
産業用ビオゴン
S-ビオゴン40mmF5.6 - マイクロフィルム記録用縮小レンズ。周辺光量落ちを補正するグラデーションフィルターが付属。調整可能な絞りはない。

関連事項

ビオゴンに関連する事項として、以下の項目が挙げられます。

カール・ツァイス
カール・ツァイスのレンズ製品一覧
ゾナー
ツァイス・イコン
コンタレックス
コンタックス
ハッセルブラッド
ローライ
京セラ
コシナ

関わった設計者

ルートヴィッヒ・ベルテレ

参考文献

小林孝久『カール・ツァイス創業・分断・統合の歴史』朝日新聞社 ISBN 4-02-258480-7

この参考文献は、ビオゴンを含むカール・ツァイスの歴史をより深く理解する上で有益です。


ビオゴンは、その高い光学性能と独特な設計思想により、長年にわたって多くの写真愛好家やプロフェッショナルに愛用されてきました。その歴史と技術は、現代のレンズ設計にも大きな影響を与えています。

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