ビシュエシュワル・プラサード・コイララ

ビシュエシュワル・プラサード・コイララ

ネパール史上、最も国民的な敬愛を集める政治家の一人として知られるビシュエシュワル・プラサード・コイララ（बिश्वेश्वर प्रसाद कोइराला、Bishweshwar Prasad Koirala、1914年9月8日 - 1982年7月21日）は、通称「B・P」として広く親しまれています。彼は、ネパール王国における第24代首相として、1959年5月27日から1960年12月15日までの短い期間、政権を担いました。ネパール会議派に所属し、同国で初めて国会での選挙を経て選出された首相という、画期的な役割を果たした人物です。

生涯と政治活動

コイララの政治家としての道のりは、長期にわたるラナ家の独裁体制との戦いから始まりました。彼はネパール会議派を率い、抑圧的な体制の打破を目指して活動を展開します。ラナ家による統治が終焉を迎えた後も、今度は国王との間で新たな対立が生じ、この摩擦によって、当初は首相の座に就くことができませんでした。

しかし、1959年に行われたネパール初の総選挙で、彼が率いるネパール会議派が第一党となり、その結果を受けてコイララは首相に選出されることになります。この首相就任に際しても、時の国王マヘンドラからの妨害がありましたが、コイララ側がインド政府に助けを求めた結果、インドからの外交的な圧力によって、彼は無事に首相に就任することができました。

首相としての改革と失脚

首相に就任したコイララは、矢継ぎ早に民主主義的な改革に着手します。特に力を入れたのは、長らく根付いていた封建的な土地制度の改革でした。さらに、王族であるシャハ家や、かつて権力を握っていたラナ家、そして西ネパールの地方権力者（ラージャ）といった特権階級への課税を導入するなど、大胆な政策を実行します。これらの改革は、長年の特権を脅かされる封建勢力からの激しい反発を招き、遂には国王マヘンドラとの決定的な対立へと発展していきました。

そして、わずか1年半余りの在任期間を経た1960年12月15日、マヘンドラ国王は突如クーデターを決行。コイララ内閣は一方的に罷免され、彼自身も身柄を拘束され投獄されることになりました。この出来事により、ネパールの民主化の試みは一時的に中断されます。

晩年と死去

コイララは1960年の投獄から8年後の1968年に釈放されますが、その後はインドへの亡命を余儀なくされます。故国を離れて活動を続けた彼は、1976年になってようやくネパールへの帰国を果たしました。しかし、彼の後半生は厳しいものでした。健康状態が悪化する中で、その時間の大部分は獄中生活か、あるいは亡命生活に費やされました。晩年、彼を診察した医師団の中には、後にネパールの大統領となるラーム・バラン・ヤーダブの名前もありました。

波乱に満ちた生涯を閉じたのは、1982年7月21日、カトマンズでのことでした。彼の死後も、「B・P」の名はネパールの民主化運動の象徴として語り継がれています。なお、彼の兄弟であるマートリカ・プラサード・コイララとギリジャー・プラサード・コイララもまた、ネパールの首相を務めており、コイララ家はネパールの近現代史において重要な役割を果たした一族です。弟のギリジャー・プラサード・コイララは、兄の功績を称え、「B.P.コイララ保健・科学大学」を設立しています。

親族

マートリカ・プラサード・コイララ（兄）：元ネパール首相
ギリジャー・プラサード・コイララ（弟）：元ネパール首相

参考文献

佐伯和彦『世界歴史叢書 ネパール全史』明石書店、2003年

関連項目

ネパールの首相
* ネパール会議派

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