ビッキー・タフミル

ビッキー・タフミル

ビッキー・タフミル（Vicky Tahumil、1974年2月26日生）は、インドネシアを代表する元プロボクサーである。主にフライ級およびライトフライ級を主戦場として、キャリアを築いた。

キャリア初期と国内での成功

1998年3月3日、インドネシアの首都ジャカルタでプロキャリアをスタートさせた。デビューから着実に勝利を重ね、2000年12月1日にはインドネシアライトフライ級王座を獲得。この国内タイトルは、実に7度にわたって防衛に成功するなど、国内では圧倒的な強さを見せつけた。

PABAタイトル獲得

国内での実績を背景に、地域タイトル戦線に進出。2004年4月13日、PABA（パンアジアボクシング協会）ライトフライ級チャンピオンであったマービン・タンパスに挑戦。この試合に3-0の判定勝利を収め、PABAタイトルを手にした。同年10月5日には、ウィサヌ・ゴーキェットジムを相手に初の防衛戦を行い、8ラウンドKO勝ちでタイトルを守った。しかし、2005年4月にはPABAライトフライ級王座を返上している。

初の海外遠征と日本のリング

2007年2月23日、タフミルはキャリア初の海外遠征として日本を訪れた。WBA世界ライトフライ級4位にランクされていたタフミルは、北海道立総合体育センターで亀田大毅と51.5kg契約の10回戦で対戦。前日計量を50.6kgでクリアし、試合に臨んだ。しかし、この試合はタフミルにとってキャリア初となる黒星となり、3ラウンド1分18秒、KOで敗れた。

この亀田大毅戦でのKOシーンは、ボクシングファンの間で語り草となっている。ボディブローを受けてダウンしたタフミルは、通常であれば苦悶の表情を浮かべる壮絶な状況であったにも関わらず、満面の笑みを浮かべながらキャンバスに沈んだ。そして、レフェリーの10カウントを聞き終えると、何事もなかったかのように平然と立ち上がり、その場を立ち去った。この印象的な振る舞いは、多くのボクシングファンの脳裏に焼き付いている。

その後のキャリア

亀田戦後、タフミルは再び世界の舞台を目指す。2007年9月25日には、南アフリカ共和国で開催されたWBF世界フライ級王座決定戦でゾラニ・テテと対戦した。しかし、この試合では4ラウンド終了時に棄権となり、タイトル獲得はならなかった。注目すべきは、この王座決定戦が、対戦したタフミルとテテの両選手がWBFランキングに名前がないという、極めて異例の形式で行われた点である。

その後もタフミルはリングに上がり続けたが、世界のトップ戦線に絡むことは難しくなった。2010年4月23日にはタイで、元WBC世界バンタム級王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーションと対戦し、2ラウンドTKO負け。さらに2011年3月22日にもタイで、プーンサワット・クラティンデーンジムと対戦し、2ラウンドKO負けを喫している。これらの試合が、彼のキャリア晩年の記録となっている。

タフミルのキャリアは、国内での盤石な地位からPABAタイトル獲得、そして初の海外挑戦での印象的な敗戦、さらに異例のWBF王座決定戦と、波瀾に富んだものであった。特に日本での試合で見せた、苦痛の中での笑顔は、タフミルというボクサーの記憶として、今も一部のボクシングファンの間で語り継がれている。

獲得タイトル

インドネシアライトフライ級王座
PABAライトフライ級王座

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