ビリンビ

ビリンビ（Averrhoa bilimbi）

ビリンビは、カタバミ科ゴレンシ属に属する熱帯樹木で、学名はAverrhoa bilimbiです。その起源はインドネシアのモルッカ諸島にあると考えられていますが、現在では東南アジアの広範囲に分布し、南アジアやアメリカの一部でも栽培されています。この木は、スターフルーツと密接な関係があり、英語ではbilimbi、cucumber tree、tree sorrelとも呼ばれています。

概要

ビリンビは小型の樹木で、高さは最大15メートルに達することがあります。この樹は枝分かれが早く、しばしば複数の幹を形成します。葉は互生で、羽状の形状を持ち、長さは約30-60センチメートルです。小葉は卵形または楕円形で、長さが2-10センチメートル、幅が1-2センチメートルのものが11-37枚ついており、枝の先端に塊状に集まっています。また、葉の形態はアメダマノキと似ています。

ビリンビの花は芳香を持ち、各幹や枝に18-68個の花が懸垂型の円錐花序を形成します。花は異型花柱性で、鮮やかな色合いの5枚の花弁から成り、長さは10-30ミリメートルに達します。花の色は黄緑色から赤紫色まで様々です。

果実は細長い楕円体で、長さは4-10センチメートル、時にはわずかに五角形の形状をしています。果皮は滑らかで、少しざらついた質感を持ち、熟すと明緑色から黄緑色に変化します。果肉はサクサクした食感ですが、果汁が非常に酸っぱいため、そのまま果実を食べることは少ないです。

分布と生息域

ビリンビは、インドネシアのモルッカ諸島が原産ですが、現在はインドネシア全土、東ティモール、フィリピン、スリランカ、バングラディシュ、モルディブ、ミャンマー、マレーシアなどで栽培されています。また、インドでは庭木として見られ、温暖な地域では野生化しています。さらに、ザンジバルでも栽培されており、1793年にはティモールからジャマイカに導入されたことで、南北アメリカでも一般的に栽培されるようになりました。

ビリンビは熱帯性の樹木であり、寒さには弱いですが、水はけの良い肥沃な土壌を好みます。特に、2-3か月の乾季があり、他は一定の降雨がある気候条件が適しています。たとえば、マレーシアの雨の多い地域では見られません。米国フロリダ州では、防寒対策が必要です。

利用

調理における活用

インドネシアでは、この果物は「belimbing wuluh」として知られ、タマリンドやトマトの代わりに用いられることが多く、特にアチェ州では保存食として塩漬けや日干しが行われ、様々な料理に使用されます。フィリピンでは「kamias」や「ibâ」と呼ばれ、一般的に家庭に出回っており、そのまま食べたり、料理に酸味を加えるために使用されます。コスタリカでは、ビリンビの果実がレリッシュとしてコメや豆料理に添えられます。

また、ビリンビの果実はジャムやピクルスの材料としても人気があります。特に、酸味を生かしてカレーに加えたり、インドのケララ州やカルナータカ州ではフィッシュカレー制作に使用されることが一般的です。モルディブやセーシェルでは、ピクルスとして料理に利用され、多様な料理に酸味を付ける役割を果たしています。

副作用の可能性

ただし、ビリンビの果実には高濃度のシュウ酸塩が含まれており、特に高コレステロール血症の治療で濃縮果汁を摂取していた人々に急性腎不全の報告があるため、注意が必要です。また、神経毒のカランボキシンも含まれており、過剰摂取すると急性腎不全を引き起こす可能性があります。

その他の利用

ビリンビは料理だけでなく、洗剤や染み抜き剤の代替品としても利用されることがあります。特にマレーシアではクリス（伝統的な刃物）を洗うために使われ、フィリピンでは衣類の染みを取るための代替品として使用されます。モルディブのアッドゥ環礁では、ビリンビの花を染料として衣類に色を付けることが一般的でした。

ビリンビはその独特な酸味と多用途性から、世界のさまざまな地域で愛される果物であり、料理や文化に多くの貢献をしています。

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