ビルマ連邦国民連合政府

ビルマ連邦国民連合政府

ビルマ連邦国民連合政府（NCGUB：National Coalition Government of the Union of Burma）は、かつて存在したミャンマー（ビルマ）の亡命政府です。この政府は、1990年の総選挙で選出された議員たちが、当時の軍事政権による民主化運動への弾圧に対抗するために樹立しました。アメリカ合衆国メリーランド州ロックヴィルに拠点を置いて活動していましたが、2011年以降にミャンマー本国で政治体制の民主化（ミャンマー民主改革）が進展したことを受け、国内の民主化運動に合流する目的で2012年9月14日に解散しました。国歌はビルマ語で「世界の終わりまで」を意味する「カバマチェ」でした。

設立の背景

ミャンマーでは、1988年の民主化運動「8888民主化運動」の高まりと、それに続く軍事クーデターにより、国家法秩序回復評議会（SLORC）による軍事政権が樹立されました。SLORCは民主化への移行を約束し、1990年5月27日に国民議会総選挙を実施しましたが、野党の国民民主連盟（NLD）が圧勝したにも関わらず、選挙結果を尊重せず、議員への弾圧を強めました。

これに対し、SLORCに抵抗する国民議会の当選議員たちは、反政府勢力の支持も得て、1990年12月18日にビルマ連邦国民連合政府（NCGUB）を公式に結成しました。これは、軍事政権による選挙結果の無視と民主化勢力への弾圧に対抗するための動きでした。アウン・サン・スー・チーの従兄弟にあたるセイン・ウィン氏が首相に就任しました。

軍事政権（後に国家平和発展評議会SPDCに改組）は新憲法制定を優先し、選挙で選ばれた議員を排除した形で制憲国民会議を進めました。NLDはこれに反発し独自の憲法草案を発表するなど抵抗を続けましたが、弾圧は続きました。NLDは1998年に国民議会代表者委員会（CRPP）を発足させ、「国民議会の代行開催」を試みるなど、国内外で民主化への働きかけを続けました。

主な活動

NCGUBは、ミャンマーの政治体制の民主化、人権保護、連邦政府の維持を主要な目的として掲げました。

対外的には、国際社会に対し軍事政権への圧力や支援を働きかけ、国連の場でミャンマーの人権状況や政治和解の必要性を訴えました。これにより、主に欧米諸国から支持を得ることに成功し、軍事政権への経済制裁なども実現しました。

対内的には、軍事政権への政治的変化を求めるとともに、少数民族武装勢力や国内民主化組織間の連携強化に努めました。特に、「国民和解プログラム」を通じて、民族間の融和と対話の推進を奨励しました。また、将来の民主化に備え、関係組織の能力向上や他国の民主化経験に関する研究も行いました。

組織構成

NCGUBは主に以下の組織で構成されていました。

国民議会代表者委員会（CRPP）: 1990年当選議員により1998年に設立された組織で、立法機関に相当。軍事政権法令の無効化宣言などを行いました。
閣僚評議会: 行政を担う最高機関で、首相が統括しました。
* 議会議員連合（MPU）: 亡命した1990年当選議員による組織。NCGUBを支援し、国際的な認知向上や民主化運動への支援獲得に努めました。

解散の経緯

2011年以降、ミャンマー国内の政治情勢は大きく変化しました。SPDCに代わって成立したテイン・セイン政権は民主化改革を加速させ、アウン・サン・スー・チーとの協力や政治犯の釈放などを行いました。これにより、国際社会はミャンマーへの経済制裁解除に動き出し、NCGUBの中心であったNLDも2011年11月にミャンマー政府に政党登録を行い、本国での政治プロセスに参加することを選択しました。

こうした国内情勢の変化により、「非民主的なミャンマー政府に対抗する」ことを目的としていたNCGUBは、その存在意義を失いました。ミャンマー本国での改革運動が進展したことを受け、NCGUBは2012年9月14日をもって解散し、活動の焦点を国内へと移しました。

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