ビーチクラフト スタッガーウィング

ビーチクラフト モデル17 スタッガーウィング

ビーチクラフト モデル17 スタッガーウィング（Beechcraft Model 17 Staggerwing）は、1930年代におけるアメリカの民間航空機の代表的存在であり、ビーチクラフト社が最初に手がけたモデルです。この機体は、1932年11月4日に初飛行を果たしました。特に特徴的なのは、複葉機であるにもかかわらず、上翼が下翼よりも後方に位置する「負の食い違い」を採用している点です。

設計と性能

この機体は420馬力のエンジンを搭載しており、最高速度は326 km/hに達します。このスピードは当時の戦闘機に匹敵するものであり、その性能は高く評価されました。ウオルター・ビーチがトラベルエア社を離れ、独自に設立したビーチクラフト社の初の成果物でもあるこの機体は、初期の複葉機デザインに新たな風を吹き込みました。

スタッガーウィングの設計には、空気抵抗を軽減するための工夫が施されており、これが高性能につながっています。通常、上翼は前方に配置されることが一般的であるため、本機の設計は大胆な試みといえるでしょう。この逆配置によって、特に着陸時に不安定になる危険性もあるものの、操縦席からの視界が大きく改善され、構造的な強度の向上にも寄与しました。

しかし、初期型のモデルでは離着陸が難しいという問題がありました。これを受けてビーチクラフト社は、操縦性を向上させるための改良に集中し、最終的に785機が生産されるまでになりました。これによって、ビーチ社は航空機製造における確たる地位を築くことができました。

日本での展開

日本においては、1936年に日本航空輸送がローカル線用としてC17Eモデルを輸入し、9月29日から運用を開始しました。その後、1938年には立川飛行機がこの機体のライセンス生産を始め、20機が製造されました。一部は警備用機として使用され、大日本航空や官庁にも納入されました。このように、スタッガーウィングは日本の航空史にもその名を刻んでいます。

派生型の展開

モデル17シリーズには多くの派生型が存在します。初期の試作型「モデル17」から始まり、量産型の「モデル17R」や出力増加型の「モデルA17F」など、さまざまなバリエーションが生まれました。中でも、モデルB17シリーズやC17シリーズは、アメリカ陸軍に採用されるなど、軍用機としても使用されました。

各モデルはエンジンの種類や出力、搭載機器が異なり、より高性能な機体が作られることで、さまざまな運用方法に適応しました。

技術的な仕様

スタッガーウィングの技術的な要素としては、全長8.15m、全幅9.75m、最大離陸重量1,928kgといった数字が示されています。また、乗客は最大3名乗せることができ、搭乗員は1名です。最高速度は341 km/hで、実用上昇限度は6095mに達します。これらのスペックは、当時の航空機と比較しても非常に優れたものでした。

映画や文化の中で

この機体は文化的にも影響を与え、『機動戦士Ζガンダム』においては、登場人物のベルトーチカ・イルマの愛機として描かれています。この作品の中では、実際のスタッガーウィングのレプリカが使われ、観衆に親しみを持たせる要素となっています。

ビーチクラフト モデル17 スタッガーウィングは、その魅力的なデザインと性能から、今でも多くの航空ファンに愛され続けています。

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