ビーバー・ダムズの戦い

ビーバー・ダムズの戦いは、1813年 6月24日に米英戦争中に現在のオンタリオ州ソロルド近くで戦われた戦闘です。この戦いは、アメリカ軍がイギリス軍の基地であるビーバー・ダムズを急襲しようとしたものの、逆にイギリスと同盟するインディアンの待ち伏せに遭い、降伏を余儀なくされたというものです。

背景

1813年5月、アメリカ軍はジョージ砦の戦いでイギリス軍を破り、砦を占領しました。しかし、アメリカ軍の追撃が不十分であったため、イギリス軍はストーニー・クリークの戦いで反撃し、アメリカ軍は後退を余儀なくされました。また、アメリカ海軍の船隊も港が攻撃される恐れから撤退しました。その後、イギリス軍はトウェルブ・マイル・クリークとビーバー・ダムズに拠点を設け、そこから民兵とインディアンがアメリカ軍に嫌がらせを繰り返していました。ジョージ砦のアメリカ軍指揮官ジョン・パーカー・ボイド准将は、この状況を打破するため、ビーバー・ダムズへの急襲を計画しました。

アメリカ軍の作戦

アメリカ軍の攻撃部隊は、チャールズ・G・ボアストラー大佐が指揮し、歩兵連隊、砲兵中隊、竜騎兵、ニューヨーク州民兵から構成されていました。彼らは6月23日の夕暮れ時にジョージ砦を出発し、クィーンストン村で宿営しました。ここで、カナダ人女性ローラ・セコールが、アメリカ軍士官たちの作戦会議を立ち聞きし、イギリス軍基地に警告するために出発しました。彼女は、アメリカ軍の歩哨を欺き、森を抜けてイギリス軍の指揮官ジェイムズ・フィッツギボン中尉の元へたどり着き、アメリカ軍の急襲計画を伝えました。フィッツギボンはこの情報を元に、450名のインディアン戦士をアメリカ軍が通る道に待ち伏せさせました。

もう一つの説では、インディアンが斥候からアメリカ軍の存在を知り、自ら待ち伏せを準備した上で、フィッツギボンに報告したとも言われています。

戦闘

6月24日、アメリカ軍はクィーンストンを出発し、ビーバー・ダムズへ向かいました。しかし、アメリカ軍が接近するにつれて、インディアンが側面と後方から近づいていることに気づきました。インディアンは攻撃を開始し、ボアストラー大佐は負傷しました。アメリカ軍は、大砲が有利に使える開けた場所での戦闘を試みましたが、フィッツギボンが白旗を掲げて降伏を勧告しました。彼はアメリカ軍が包囲されており、降伏しなければインディアンによって全滅させられると警告しました。その結果、ボアストラーは484名の兵士と共に降伏しました。

この戦いで、インディアン側は5名の戦死者と20名の負傷者を出し、アメリカ軍は56名の損失を出しました。一部の負傷者はインディアンによって殺害されたという報告もあります。

結果

ビーバー・ダムズの戦いにおけるアメリカ軍の敗北は、ジョージ砦のアメリカ軍の士気を大きく低下させました。その後、アメリカ軍は砦から1マイル以上離れた場所への偵察もほとんど行わなくなりました。さらに、7月8日には、イギリス軍が埋めた薬箱を回収に行った際、アメリカ軍がインディアンの待ち伏せに遭い、多くの兵士を失う事件も発生しました。

9月には、アメリカ軍正規兵の多くがサケット港に転進し、ジョージ砦はニューヨーク州民兵に引き渡されました。

伝説

地元の伝説では、「カフナワガ族が勝利を掴み、モホーク族が略奪し、フィッツギボンが功績を挙げた」と言われています。フィッツギボンは、戦闘後、インディアンの活躍が戦いの決め手になったと報告しています。また、デュシャルム大尉は、自身がアメリカ軍に降伏を要求したことはないと述べています。これは、彼がフランス系カナダ人で英語を話せなかったためです。

ローラ・セコール

1827年、フィッツギボンはローラ・セコールの功績について、彼女がアメリカ軍の作戦を知り、6月22日の日没後にビーバー・ダムズまで駆けつけ、アメリカ軍の急襲計画を伝えたと証言しました。この証言により、ローラ・セコールの行動がアメリカ軍の作戦に影響を与えたことが明らかになりました。

ビーバー・ダムズの戦い