ジョージ砦の戦い

ジョージ砦の戦い（英: Battle of Fort George）は、1813年5月25日から27日にかけて、米英戦争の最中に発生した戦闘です。アメリカ軍がアッパー・カナダ（現在のオンタリオ州）のナイアガラ川河口近くに位置するイギリス軍の要塞、ジョージ砦を攻撃し、占領しました。この戦いでは、アメリカ陸軍と海軍が連携し、水陸両面からの攻撃を仕掛け、見事成功を収めました。しかし、イギリス軍守備隊の多くは包囲網を脱出し、撤退しています。

背景

ジョージ砦は、オンタリオ湖畔に位置するイギリス軍の最西端の要塞基地でした。他の主要な基地としては、アッパー・カナダの首都ヨーク（現在のトロント）とキングストンがあります。キングストンには、プロビンシャル・マリーンと呼ばれる小規模な海軍戦隊が駐留していました。ジョージ砦は、ナイアガラ川の河口近くの西岸に位置しており、対岸にはアメリカ軍のナイアガラ砦がありました。ナイアガラ砦は、1796年のジェイ条約に基づきイギリスからアメリカに引き渡されたものであり、ジョージ砦はその対抗として建設されました。

1812年の出来事

米英戦争勃発時、ジョージ砦とナイアガラ砦の守備隊は、戦闘準備が整っていないと判断していました。1812年5月、カナダ軍政府司令官のジョージ・プレボスト中将は、ジョージ砦には第41連隊の兵士400名と砲兵中隊が駐屯していると述べていました。また、アメリカ軍が大規模な攻撃を仕掛けてきた場合には、砦を維持できないとも考えていました。一方、アメリカ側では、ナイアガラ砦がイギリス軍の攻撃に対して脆弱であるという意見が出ていました。しかし、1812年6月までには、ナイアガラ砦のアメリカ軍指揮官はイギリス軍の攻撃を予測し、援軍を要請していました。

1812年10月、アメリカ軍はジョージ砦を攻撃する作戦を計画しましたが、これは連携の失敗により失敗に終わりました。クィーンストン・ハイツの戦いでは、ジョージ砦とナイアガラ砦の間で砲撃戦が発生し、アメリカ軍は郡庁舎などの建物を焼失させました。

アメリカ軍の1813年の作戦

1813年、アメリカ軍は新たな作戦を立てました。この作戦では、まずキングストンとヨークを攻撃し、その後にジョージ砦を攻撃することとしました。しかし、カナダ戦線のアメリカ方面軍指揮官であるヘンリー・ディアボーン少将は、キングストンに多数のイギリス兵がいるという誤った情報に基づき、キングストンを避けるよう作戦を変更しました。

1813年4月、アメリカ軍はヨークの戦いに勝利し、数日間ヨークを占領しました。その後、アメリカ軍はナイアガラ砦へ移動し、ジョージ砦への攻撃を準備しました。しかし、部隊は休息と再編成を必要としており、物資や食料も不足していました。このような状況下で、ウィンフィールド・スコット大佐がディアボーンの副参謀に任命され、部隊の管理を改善しました。

アメリカ軍は、ジョージ砦に対してナイアガラ川岸ではなく、オンタリオ湖岸から上陸する作戦を立てました。上陸時には、重砲を搭載したスクーナーが支援することになり、大型艦はイギリス軍砲台と交戦することになりました。アメリカ軍は、約4,000名の正規兵を4波に分けて上陸させる計画を立てました。

戦闘開始

5月25日、ナイアガラ砦とチョウンシー艦隊のスクーナーからジョージ砦への砲撃が開始されました。砦内の木造の建物が数棟焼け落ち、女性や子供たちは避難を余儀なくされました。イギリス軍は、攻撃が迫っていることは認識していましたが、攻撃方向を特定できず、正規兵を3つの分遣隊に分けて配置していました。

5月27日、早朝の霧が晴れると、アメリカ軍の艦船が現れました。スコットの部隊がナイアガラ川河口近くで上陸を開始しました。ペリーのスクーナー隊がイギリス軍の砲台を沈黙させ、スコット隊は海岸に上陸しました。グレンガリー軽装歩兵隊がアメリカ軍に銃剣突撃を仕掛けましたが、アメリカ軍の砲撃によって退却を余儀なくされました。アメリカ軍は、増援部隊を得て再び攻撃を仕掛け、イギリス軍は後退しました。

イギリス軍の撤退

ワインダーの旅団が上陸を開始すると、ビンセントは、数的に不利であり、側面攻撃を受けていたことから、完全包囲される前に兵を撤退させることを決定しました。イギリス軍は、砦の大砲を使用不能にし、火薬庫を爆破するよう命じましたが、その作業は不十分で、アメリカ軍は砦をほぼ無傷のまま確保しました。

アメリカ軍は、イギリス軍を追撃しましたが、イギリス軍の後衛隊によって一時的に食い止められました。アメリカ軍の作戦では、竜騎兵隊がイギリス軍の退路を遮断することになっていましたが、イギリス軍の砲撃によって遅延し、その間にスコット隊が追いついたため、追撃は中止されました。

損失

アメリカ軍の損害は、戦死41名、負傷113名でした。一方、イギリス軍の公式報告では、戦死52名、負傷44名、不明262名となっていました。しかし、負傷者や捕虜を含めると、イギリス軍の損失は総計459名となりました。

結果

アメリカ軍は、イギリス軍に大きな損害を与え、要塞を占領することに成功しました。この勝利は、若い士官であるスコットとペリーの優れた作戦と指導力によるものでした。

イギリス軍は、ビーバーダムズまで後退し、他の基地からの部隊を集結させました。その後、オンタリオ湖西端に近いバーリントンハイツまで撤退しました。アメリカ軍は、ジョージ砦占領後もナイアガラ半島を侵攻しましたが、ストーニー・クリークの戦いでイギリス軍に敗れ、ジョージ砦に撤退しました。

その後、アメリカ軍はジョージ砦周辺に留まり、1813年12月に砦を放棄するまで、大きな動きはありませんでした。現在のアメリカ陸軍には、この戦闘に参戦したアメリカ軍部隊の後継部隊であるとする部隊が10個存在します。

この戦いは、米英戦争における重要な出来事の一つであり、両軍の戦略や戦術を理解する上で重要な資料となります。

もう一度検索