ピアノソナタ第20番 (シューベルト)

ピアノソナタ第20番 イ長調 D 959

このピアノソナタは、オーストリアの作曲家フランツ・シューベルトによって1828年に書かれた作品です。作曲者自身の最晩年に生み出された傑作の一つであり、同年に作曲された他の2曲、ハ短調の第19番（D 958）と変ロ長調の第21番（D 960）と共に、シューベルト後期の三大ピアノソナタとして知られています。

同時期の第19番が劇的な内省を秘めた色彩を帯び、第21番が深い叙情と静謐さを湛えているのに対し、本作は全編を通して明るく温かみのある響きが際立ち、明朗な性格を特徴としています。その音楽的な内容は、作曲家が円熟期に至って到達した境地を示しています。

楽曲構成

本作は全4楽章で構成されており、演奏時間は約42分と比較的規模の大きな作品です。同じイ長調で書かれた初期の優美なソナタD 664（第13番）と対比され、その規模の大きさからしばしば「イ長調の大ソナタ」と通称されます。また、作曲家の初期作品、例えば第4番ソナタD 537の楽章からの主題引用など、創意工夫に富んだ内容を含んでおり、特に終楽章はその形式的な平明さが特徴として挙げられます。

第1楽章：アレグロ

イ長調、4分の4拍子によるソナタ形式。力強く開始され、豊かな旋律が次々と現れます。展開部は劇的な展開を見せ、再現部を経て結ばれます。

第2楽章：アンダンティーノ

嬰ヘ短調、8分の3拍子による三部形式。物憂げな主題で始まりますが、中間部には幻想的で激しい性格を持つ対照的な部分が挿入され、楽章に深みと変化を与えています。その後、冒頭の主題が回帰し、静かに閉じられます。

第3楽章：スケルツォ：アレグロ・ヴィヴァーチェ – トリオ：ウン・ポコ・ピウ・レント

イ長調、4分の3拍子による主部（スケルツォ）と、ニ長調による中間部（トリオ）からなる複合三部形式。スケルツォ主部は活気に満ちた軽快な音楽であり、トリオはそれとは対照的にやや遅いテンポで穏やかな歌謡風の旋律が奏されます。

第4楽章：ロンド：アレグレット - プレスト

イ長調、4分の4拍子によるロンドソナタ形式。作曲家が以前に書いた第4番ソナタの第2楽章で用いられた主題が引用され、楽章全体を統一する主題として活用されています。A-B-A-展開部-A-B-Aというロンド形式の構成を持ちつつ、ソナタ形式の展開部や再現部のような要素も含まれます。楽章の最後はテンポをプレストに上げ、華麗に終結します。

作品が使用された事例

ロベール・ブレッソン監督が1966年に発表したフランス映画『バルタザールどこへ行く』（Au hasard Balthazar）では、本作の第2楽章が全編にわたって印象的に使用されています。この映画で使用された録音は、ピアニストのジャン＝ジョエル・バルビエによるものです。

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