ピアノ協奏曲第2番 (サン＝サーンス)

ピアノ協奏曲第2番 ト短調 作品22

カミーユ・サン＝サーンスが作曲した5曲のピアノ協奏曲の中で、2番目に位置する作品です。1868年に完成し、同年5月13日にパリで初演されました。この初演では、サン＝サーンス自身がピアノ独奏を務め、指揮は彼の友人であり高名なピアニストでもあったアントン・ルビンシテインが担当しましたが、これはルビンシテインにとって初めての指揮台での演奏会でした。

初演の結果は必ずしも成功したとは言えませんでした。後にサン＝サーンスはこの原因について、作曲から初演までの期間がわずか3週間と非常に短く、十分な練習時間が確保できなかったためであると述懐しています。当時の評論家や聴衆は、特に各楽章の音楽的性格が大きく異なる点に注目しました。作曲家でピアニストのジグムント・ストヨフスキは、この作品を「J.S.バッハに始まり、オッフェンバックに終わる」と評したという有名な言葉を残しています。これは、第1楽章の厳格な雰囲気から、第3楽章の軽快で大衆的な性格まで、幅広い音楽性が包含されていることを端的に表現したものです。

一方で、作曲家フランツ・リストはこの作品を高く評価し、その支持もあってか、次第にサン＝サーンスの主要なレパートリーとして定着していきました。現在では、第4番と並んで、サン＝サーンスのピアノ協奏曲の中で最も親しまれ、演奏される機会が多い作品の一つとなっています。楽譜は1868年中に刊行され、1875年にはデュラン社から第1番、第3番と共に再版されています。また、作曲家ジョルジュ・ビゼーによるピアノソロ用の編曲も存在し、これは演奏技巧上かなりの難度を持つ作品として知られています。

楽器編成

この協奏曲は、独奏ピアノの他、フルート2、オーボート2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、そして第3楽章で任意に使用されるシンバル、弦楽五部という編成で演奏されます。

構成

伝統的な3楽章形式が採用されていますが、その構造は従来の協奏曲とは一線を画しています。一般的な協奏曲では第1楽章が最も速いテンポで書かれることが多いのに対し、この作品では各楽章が順に速いテンポで展開されるというユニークな特徴を持っています。全曲の演奏時間は約24分です。

第1楽章 Andante sostenuto
ト短調、4分の4拍子で書かれたソナタ形式の楽章です。曲はバロック音楽、特にバッハの音楽を彷彿とさせる自由な即興的なカデンツァで開始されます。その後、フランス風序曲を思わせる重厚な管弦楽の和音に導かれて主部が始まり、第1主題と第2主題は主に独奏ピアノによって提示されます。再現部では、管弦楽が第1主題を奏した後、再びピアノによる長大なカデンツァが続きます。第2主題はここでは再現されず、冒頭の序奏主題が短く回想された後、劇的な幕切れを迎えます。この楽章の第1主題については、アルフレッド・コルトーが作曲家ガブリエル・フォーレの合唱曲（おそらく破棄されたもの）からの引用である可能性を指摘しています。

第2楽章 Allegro scherzando
変ホ長調、6分の8拍子のソナタ形式で書かれています。標題の通り、スケルツォ風の楽章であり、全体に軽妙で快活な性格を帯びています。独奏ピアノは洗練された技巧を披露し、滑るような速いパッセージを奏でます。第1主題はフレデリック・ショパンの「スケルツォ第4番」との音楽的な類似性が指摘されています。

* 第3楽章 Presto
ト短調、2分の2拍子のソナタ形式による終楽章です。イタリアのタランテラを思わせる激しい動きが特徴で、前の楽章に比べて管弦楽の役割が増し、より厚みのある響きが生まれています。ニ短調で提示される第2主題はピアノによる流麗な旋律であり、続いてトリルを多用した活気あるコデッタ主題が現れます。展開部では第1主題が展開され、特にコデッタに由来するトリル音形が徹底的に展開されます。終盤のコーダは規模が大きく、冒頭から登場した3つの主要な主題が扱われます。音楽の勢いは最後まで衰えることなく、力強いト短調の主和音の響きで全曲を閉じます。このコーダの部分については、金澤攝氏が本作を献呈されたルビンシテインの「ピアノソナタ第2番」の終楽章との関連性を指摘しています。

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