ピアノ協奏曲第2番 (スタンフォード)

チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードが作曲した《ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品126》は、20世紀の幕開けから間もない1911年に完成された、彼の創作活動における円熟期を代表する管弦楽作品の一つです。アカデミックな素養を持ちながらもロマンティックな情感を表現したスタンフォードは、この作品において伝統的な形式に則りつつ、独自の音楽語法を展開しています。

この協奏曲は、完成から数年の時を経て初めて楽壇に紹介されました。世界初演は1915年6月、アメリカ合衆国バージニア州ノーフォークで開催された「ノーフォーク音楽祭」（American Music Festival in Norfolk）において行われています。この記念すべき初演では、当時の著名なピアニストであるハロルド・バウアーが独奏を務め、オーケストラの指揮はアーサー・ミーズが執り行いました。作品が故国イギリスで初めて演奏されるまでには、さらに時間が必要でした。ロンドンでの初演は、1919年4月29日にクイーンズホールにて実現しています。このロンドン初演でピアノ独奏を担当したのは、ロシア出身の名手ベンノ・モイセイヴィチでした。作品は、カール・ストゥッケルとロバート・マクイーンの二人の人物に献呈されています。

本作は演奏時間が約40分を要する大作であり、その音楽的内容も充実しています。編成は独奏ピアノに加え、以下の標準的な規模のオーケストラが用いられています。

木管楽器: フルート2、オーボエ2、クラリネット2 (B♭管)
金管楽器: ホルン4 (F管)、トランペット2 (F管)、トロンボーン3
打楽器: ティンパニ
弦楽器: 弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

楽曲は伝統的な急-緩-急の三楽章構成で書かれており、各楽章が明確な性格を持っています。

第1楽章 アレグロ・モデラート

第1楽章は、穏やかながらも活気のあるアレグロ・モデラートのテンポで開始されます。序奏的な部分では、独奏ピアノが背景となる分散和音などのパッセージを奏でる一方で、ホルンが上昇音を主体とした印象的な動機を提示します。この動機は楽章全体の展開において重要な役割を果たし、特にクライマックスを築く終結部、すなわちコーダにおいても再び現れて楽章を力強く締めくくる要素となります。オーケストラと独奏ピアノは対話しながら、ソナタ形式に準じた構成の中で音楽が展開していきます。

第2楽章 アダージョ・モルト - ピウ・モッソ (クアジ・アンダンテ)

緩徐楽章にあたる第2楽章は、深い叙情性を帯びたアダージョ・モルトの速度で始まります。楽章は独奏ピアノによるアルペッジョの美しい響きによって静かに幕を開け、幻想的な雰囲気を醸し出します。開始からほどなく、このピアノのアルペッジョに弦楽器群が加わり、心に染み入るような旋律を奏でます。楽章の中間部では、ピウ・モッソ（クアジ・アンダンテ、やや速く歩くような速さで）と速度が指定され、より感情的な起伏が表現されます。

第3楽章 アレグロ・モルト ラルガメンテ・エ・ソステヌート

終楽章は、快活で力強いアレグロ・モルトのテンポで開始されます。短いながらもオーケストラと独奏ピアノによる劇的な序奏が提示された後、独奏ピアノが技巧的なパッセージを伴う主要な第1主題を奏で、華やかに楽章を展開させていきます。楽章の中盤には、第2楽章で提示された抒情的な主題が回想されるように再び現れ、楽曲全体に統一感と深みを与えます。コーダに向かうにつれて、第1楽章の冒頭で現れた上昇動機がハ長調へと転調し、輝かしく祝祭的な性格を帯びます。これにホルンをはじめとする金管楽器が加わることで、全曲を締めくくる明るく華やかなクライマックスが築かれ、力強く終止符が打たれます。

スタンフォードのピアノ協奏曲第2番は、イギリス音楽における協奏曲の豊かな伝統を受け継ぎつつ、作曲家独自の成熟した語法が光る傑作と言えるでしょう。その充実した内容と規模は、聴き応えのあるシンフォニックな体験を提供します。

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