ピアノ協奏曲第4番 (サン＝サーンス)

ピアノ協奏曲第4番 ハ短調 作品44

カミーユ・サン＝サーンスが1875年に完成させた「ピアノ協奏曲第4番 ハ短調 作品44」は、彼の5曲あるピアノ協奏曲の中でも特に高い評価を得ており、演奏機会の多い傑作の一つです。この作品は同年10月31日、パリにおいて、作曲者自身の独奏、エドゥアール・コロンヌ指揮によるコンセール・シャトレ芸術協会の初演でその姿を現しました。

この協奏曲の際立った特徴は、独奏ピアノと管弦楽が互いに緊密に連携し、協奏曲でありながら交響曲のような壮大なスケール感を追求している点にあります。実際に、楽曲に用いられている素材の一部は、サン＝サーンスが1854年に手掛けた交響曲のスケッチから転用されています。また、この作品では、セザール・フランクやその門下生たちが発展させた「循環形式」が積極的に採用されています。サン＝サーンス自身も独自の探求を通じて循環形式のアイデアを深めており、フランツ・リストが提唱した「主題変容」の手法を取り入れることで、主要な主題を楽曲全体にわたって繰り返し登場させ、変奏や展開を施すことで、作品の音楽的な統一性を強固にしています。

楽譜は1877年に出版され、後にはガブリエル・フォーレによって2台ピアノ版への編曲も行われています。

楽器編成

この作品は以下の楽器のために書かれています。

独奏ピアノ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン2
トランペット2
トロンボーン3
ティンパニ
弦五部

構成

サン＝サーンスのピアノ協奏曲の中で、この第4番は唯一、全体が二つの大きな楽章で構成されている点が特徴です。これは協奏曲としては比較的珍しい形式ですが、各楽章はさらに複数の部分に細分化されており、内部的に複雑な構造を持っています。後に作曲されるヴァイオリンソナタ第1番や交響曲第3番といった代表作でも、同様の形式が採用されています。全曲の演奏時間は約25分です。

第1楽章 (Allegro moderato - Andante)

この楽章は二つの部分から成り立っています。

第1部 Allegro moderato (ハ短調、4分の4拍子): 変奏曲形式に基づいています。まず管弦楽によって、次いで独奏ピアノによって、後の楽章でも重要な役割を果たす循環主題(I)が提示されます。この部分は基本的にこの主題とその変奏のみで構成されます。例えば、最初の変奏ではチェロが旋律線を担い、次の変奏では管楽器が活躍するなど、多彩な音色で主題が彩られます。短い経過句を伴うコーダで閉じられます。

第2部 Andante (変イ長調、4分の4拍子): 自由なソナタ形式に近い構成で、短い序奏が付いています。ピアノの軽やかなパッセージによる繋ぎの後、木管楽器がコラール風の静かな循環主題(II)を奏でます。しかし、この主題が十分に展開される前に、ピアノが新たな循環主題(III)を提示し、続いてこれら二つの主題を用いた展開部へと進みます。再現部では循環主題(III)のみが拡大されて登場し、静けさを湛えたコーダで楽章を締めくくります。

第2楽章 (Allegro vivace - Andante - Allegro)

第二楽章は三つの部分（または後半二つを一括して二つの部分と考えることもできます）に分かれています。

第1部 Allegro vivace (ハ短調、2分の4拍子): スケルツォに相当する部分です。ピアノが第1楽章に由来する半音階的なスケルツォ主題を快活に提示し、その後、循環主題(I)が管弦楽に現れ、ピアノへと引き継がれます。中間部のトリオは変ホ長調となり、ピアノが6/8拍子の新しい主題を奏でます。その後スケルツォが再現され、ピアノの技巧的なパッセージで静かに消え入るように終わります。

第2部 Andante (ハ短調、4分の4拍子): この部分は非常に短く、次の部分への序奏としての性格が強いです。循環主題(III)に基づいたフガートで開始されますが、後の伏線として循環主題(II)が一瞬だけ姿を見せます。

* 第3部 Allegro (ハ長調、4分の3拍子): 明るいハ長調に転じ、ソナタ形式で構成されます。循環主題(II)が変形された行進曲風の第1主題が、独奏ピアノの単音で力強く提示されます。これに続く第2主題は、付点リズムとヘミオラのリズムが特徴的です。展開部では、これら二つの主題に加え、循環主題(III)も対位法的に組み合わされ、音楽的な密度を高めます。独奏ピアノと管弦楽が一体となって音楽はクライマックスへと向かい、第1主題のみが再現された後、全曲は華やかで堂々とした雰囲気の中で閉じられます。

もう一度検索