ピウス12世 (ローマ教皇)

ピウス12世について

ピウス12世（Pius XII）は、1876年3月2日に生まれ、1958年10月9日に亡くなった第260代ローマ教皇です。本名はエウジェニオ・マリア・ジュゼッペ・ジョヴァンニ・パチェッリ（Eugenio Maria Giuseppe Giovanni Pacelli）で、教皇としての在位期間は1939年から1958年でした。彼は「黒い貴族」として知られる家系に生まれ育ち、歴史的背景の中で教皇庁の重要な役割を果たすことになります。

生い立ちと経歴

パチェッリ家は教皇領での有力な家系で、祖父や父も教皇庁に関与を持っていました。1899年には司祭に叙階され、その後外交官として多くの国で活動を開始しました。1917年にピウス11世によって枢機卿に任じられ、国務長官として教皇庁の外交政策に多大な影響を与えました。特に、ナチス政権下のドイツとの政教条約であるライヒスコンコルダートの締結は、後に大きな批判を受けることになります。これは、ナチスの政策を黙認したとの見方が強まったためです。

第二次世界大戦における教皇の姿勢

1939年に教皇に選出されたピウス12世は、戦争が始まると「不偏」を主張しましたが、ナチスによるユダヤ人迫害に対して明確な非難をしなかったことが問題視されました。特に、彼の教皇としての発言はユダヤ人の状況を守るためには不十分だったとの批判が多く存在します。ただし、彼はナチスが障害者を対象にした「T4作戦」を非難しました。この時期、教皇庁は多くのユダヤ人をバチカンに匿い、保護する努力をしていたという見方もあり、彼の活動を評価する声もあります。

特に、戦後の研究によると、ピウス12世の影響によって70万から85万人のユダヤ人が救われたとされています。このため、イスラエル政府から「諸国民の中の正義の人」賞が贈られることとなりました。

信仰と科学

ピウス12世は1950年に、聖母マリアが肉体と霊魂をともに天国に挙げられたという教義を正式に宣言しました。また、ビッグバン理論に関する発言もあり、これは創世記との関連に触れたものでしたが、後に科学と信仰の混同を避けるために自らの発言を撤回することになります。彼の死因は脳卒中であり、1958年には教皇としての長い歴史が幕を閉じました。

死後の評価

ピウス12世の死後、彼の政策や行動に関しては賛否が分かれています。特にホロコーストにおける反応については、彼がユダヤ人迫害を見過ごしたとの批判が強まっており、この主張は多くの書籍や映画でも取り上げられています。また、彼の教皇としての評価は、時代とともに変わりつつあり、最近の研究では彼が行った多くの行動を再評価する動きも見られます。

ピウス12世の生涯と業績については、今後も議論を呼ぶテーマであり続けることでしょう。

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