ピウス12世 (ローマ教皇)

ピウス12世：論争の教皇

ピウス12世（1876年3月2日 - 1958年10月9日）は、第260代ローマ教皇であり、在位は1939年3月2日から1958年10月9日まででした。本名はエウジェニオ・マリア・ジュゼッペ・ジョヴァンニ・パチェッリ。

生い立ちと教皇庁でのキャリア

ローマの貴族階級出身のパチェッリは、代々教皇領政府で要職を務めた家柄でした。1899年に司祭に叙階された後、教皇庁の外交官として頭角を現し、特にドイツとの関係構築に尽力しました。1933年には、ナチス・ドイツとの間でライヒスコンコルダートを締結しましたが、これが後に大きな批判を浴びることになります。しかし、当時の教皇庁は、各国との関係正常化とカトリック信徒の保護を目的として、同様の政教条約を多数締結していました。

第二次世界大戦下の教皇

1939年、ピウス12世として教皇に選出された彼は、第二次世界大戦中、「不偏」の立場を表明しました。しかし、ナチスによるユダヤ人迫害に対する明確な非難を避けたことが、戦後大きな批判の的となりました。一方で、ナチスの障害者安楽死政策「T4作戦」は強く非難しています。

ユダヤ人への対応：賛否両論

ピウス12世のユダヤ人への対応については、様々な見解があります。擁護派は、彼が積極的にユダヤ人を保護したと主張し、実際に多くのユダヤ人がバチカンに匿われ、市民権を得ました。また、カトリックの修道院や学校がユダヤ人を隠したという証言もあります。ユダヤ人外交官Pinchas Lapideによれば、ピウス12世によって数十万人のユダヤ人が救われたとされています。

しかし、批判派は、彼が公然とユダヤ人迫害を非難しなかったことを問題視し、それが結果的にナチスの行動を助長したと主張します。グイド・クノップの著書には、ピウス12世が非アーリア人のカトリック教徒への援助が困難であると述べた書簡が引用されています。

近年、バチカン・アーカイブの公開が進み、ピウス12世に関する史料が閲覧可能になったことで、彼のユダヤ人に対する活動がより詳細に検証されています。

聖母の被昇天とビッグバン理論

1950年、ピウス12世は「聖母の被昇天」を正式な教義として宣言しました。また、宇宙の起源に関するビッグバン理論が広まり始めた際、彼はこの理論が創世記の記述を裏付けると公式声明を発表しましたが、提唱者であるルメートルの説得により、後にこの件について触れることはありませんでした。

死去と列聖調査

晩年は健康状態が悪化し、1958年に死去しました。ヨハネ・パウロ2世の時代に入ると列聖調査が進められましたが、批判もあり、現在も議論が続いています。

没後の評価

ピウス12世の生涯は、没後も様々な角度から議論されています。ホロコースト研究者の間では、彼の沈黙がナチスのユダヤ人迫害を看過したという見解が主流です。一方、近年では、彼が密かに反ナチス活動を支援していたという研究結果も発表されています。

ピウス12世の評価は、未だ定まっておらず、今後の研究によってさらに明らかになることが期待されます。

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