ピエールシャルル・ブドー

ピエールシャルル・ブドー：天才騎手の栄光と転落

ピエールシャルル・ブドーは、2009年のデビュー以来、フランス競馬界を代表する騎手として活躍しました。名門アンドレ・ファーブル厩舎からキャリアをスタートさせ、若き日からその才能をいかんなく発揮。2013年にはフランスリーディングジョッキー3位にランクインし、オリビエ・ペリエの後継者と目されるまでに成長しました。

ブドーの才能が世界に知らしめられたのは、2014年のパリ大賞典制覇でしょう。ギャランテに騎乗し、GI競走初制覇を成し遂げました。同年、彼は短期騎手免許制度を利用して初来日を果たします。栗東の池江泰寿調教師と吉田勝己馬主のサポートを受け、14戦目でJRA初勝利を挙げました。しかし、体重調整の苦しさから短期免許期間を満了せず帰国、その後日本での騎乗はありませんでした。

2015年にはフランスリーディングジョッキーをクリストフ・スミヨンと分け合い、翌2016年には驚異的な活躍を見せます。10月にはスミヨンが保持していた年間最多勝記録を更新し、最終的に301勝という驚異的な数字を記録。これはドイツのペーター・シールゲンが持っていた欧州年間最多勝記録273勝を大きく上回るものでした。この記録は、後にスミヨンによって更新されましたが、ブドーの圧倒的な才能を示す金字塔となりました。2018年も209勝を挙げ、スミヨンに次ぐ2位の実績を残しています。

華々しい活躍の裏で、ブドーは2021年、女性に対する暴行容疑で起訴され、フランスギャロから3ヶ月の騎乗停止処分を受けました。その後、処分期間は6ヶ月に延長され、そして2022年11月、フランスギャロは国内務省の要請により、ブドーの騎手免許を取り消しました。これは事実上の騎手人生の終焉を意味します。

ブドーの日本での騎乗は短期間でしたが、印象的なエピソードも残っています。2014年11月15日の東京競馬場でのレースで、減量に失敗した彼は、規定の斤量をクリアするために両足のブーツを脱いで騎乗するという前代未聞の行動に出ました。12番人気だったノワールギャルソンを2着に導いたこのレースは、彼の勝負師としての気概と、並々ならぬ努力を物語っています。この行動に対してJRAは戒告処分を下しましたが、彼の勇敢さには多くのファンが魅了されました。

ブドーの騎乗馬には、凱旋門賞優勝馬ヴァルトガイスト、ジャック・ル・マロワ賞優勝馬エソテリック、ディアヌ賞優勝馬ファンシーブルーなど、数々の名馬が含まれています。これらの馬とのコンビで、彼は数々の栄光を掴みました。

華麗なる騎乗技術と、数々の記録、そして突然の転落。ピエールシャルル・ブドーの物語は、競馬史に大きな足跡を残しました。彼の功績は、多くの競馬ファンによって長く語り継がれることでしょう。彼の才能と、そしてその後の出来事から、私たちは多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか。

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